ボーイハントV かわいい恋人 (1)

                                      
作:michi

ボスッ!冴子の渾身の蹴りが男の股間に炸裂した。

「うお、お、お、お・・・・・。」男は呻き声を漏らしてうずくまった。――クリスマスパーティが終わり、しこたま酔っ払った冴子を心配し、男は送迎を申し出た。しかし車が通過したのはラブホテルの門だった。事前に何かしらそういう事をほのめかしてくれれば、冴子もまんざらでは無い。しかし、当然のように振舞う男の不遜な態度に先程かけられた言葉・・・・「お前誰とでも寝るんだろ?」これが彼女の神経を逆撫でた。やんわりと断るつもりだったが、男が逆切れ気味で冴子を強引に連れ込もうとした為、先程の攻撃となった訳だ。

「フンッ」冴子は男に一瞥をくれてやった後、そそくさとタクシーを拾い、家に帰った。

「あ〜あ・・・・私もこんなんじゃ、ユーリの事とやかく言えないわ・・・。」部屋に着いた後、冴子は溜息と同時にベッドに寝転んだ。

 

彼女のフルネームは三浦冴子。川端由梨の親友で由梨のショタ趣味と鼻フェチを唯一知っている人間である。

 

翌朝、冴子は二日酔いが残った状態で出掛けた。大学は冬期休講だが、部屋に引きこもってても気が滅入る。

「あらあ、サエちゃん久しぶりねえ。いつも祐樹の世話を押し付けてごめんねえ。」祐樹の家に行ってみたが、彼は留守だった。共働きである祐樹の両親にとって、実の姉のような冴子は実にありがたい存在だった。

「あら、そうですか・・・・ガールフレンドの所かな?」ちょっとふざけて言ってみた。

「あはは、まさかねえ。あの子ったら、そんなのはさっぱりだから・・・・折角だからお茶飲んでかない?」

「いえ、通りに寄っただけですから・・・・また今度。」祐樹の母に軽くお辞儀をし、冴子は再び歩き出した。

「ユーリの所かな・・・・。」冴子は呟いた。最近由梨の充実した表情が気になる。祐樹を紹介してからの現象だから、彼と何かあったのは間違い無い。まあ、元々祐樹は弟のような存在だったから別に気にも止めて無かったが、由梨の様子を見ると内心穏やかでは無かった。

「私って・・・・ヤな女ね・・・。」冴子は自分の正体に気付いてた。男っ気の無い由梨に対して少しばかりの優越感があったのだ。自分のルックスとプロポーションには自信がある。由梨を頻繁に合コンに誘うのは友情では無くて、自分を引き立たせる為では無かったか・・・・?

「ええい!」頭が嫌な考えで一杯になり、冴子は足下の小石を蹴り飛ばした。

「痛っ!」運悪く力を入れすぎた為、小石は高く舞い上がり、ベンチで読書をしてた男の子の頭に命中した。

「あ!ごめんなさ〜い!」冴子は慌てて少年の下に駆け寄った。

「大丈夫?あ、コレこぶ?どうしよ〜・・・・病院行く?」冴子の慌てる様子と正反対に少年は落ち着き払った笑顔を見せた。

「大丈夫ですよ、これ位。・・・・ちょっとビックリしちゃったけど・・・・。」

「ホントごめんね〜・・・・私昨日からムシャクシャしてて・・・。」安心感と恥ずかしさが入り混じったまま、冴子は少年の頭を撫で続けた。

「あはは、くすぐったい・・・・。」少年の表情を見て冴子の胸はキュンッと高鳴った。祐樹並みに整った目鼻立ち、余り背は高くないが、スマートな体つき。あどけない可愛さがあるが、顔のサイズから見ると幾分大きすぎる感のある眼鏡が彼を知的に見せた。

「君、ここで本読んでたの?こんなに寒いのに。」

「ええ・・・何となく外の方が気分いいんです。頭もスッキリするし。」屈託の無い笑顔で少年が答えた。

「そうなんだ・・・。ねえ?もしよかったら何か食べに行かない?お詫びにお姉さんが奢るから。」

「え?いや、いいですよ。この程度でかえって悪いです。」

「いいのよ。子供が遠慮しないの。」

「・・・・・・・僕はもう中学生です。」

「私から見たら充分子供よ。いいからついて来なさいな。」戸惑う少年を連れて冴子は歩き出した。

 

「どう?お味は。」冴子と少年は街中のカフェに向き合って座っていた。

「とってもおいしいです。」アップルパイを一口頬張った少年は、子供らしい笑みを浮かべて答えた。

「そう、ココのパティシェね、フランスの修行から帰ってきたばかりなの。私の一番お気に入りの店なんだ。」

「へえ、そうなんですか・・・・。」外見は大人びていても、やはり子供である。絶妙な味に無邪気な笑みがこぼれている。冴子はローズティーを手に取り、微笑んだ。

「そう言えば君の名前聞いてなかったわね。」

「あ、そうでしたね。僕は前原純です。」

「中学生だったっけ?」

「はい、1年です。」

「あら?ユウ君と一緒ね。どこ?」

「進英学園中等部です。」有名なエスカレーター式の私立男子高だ。

「へ〜凄い。将来有望じゃない。」

「そ、そんな事無いです・・・・」あまり異性への免疫が無いのだろう、純はモジモジしながら照れ笑いを浮かべた。

「ユウ君って誰ですか?」

「私のイトコよ、富沢祐樹君。キミとおんなじ年の男の子。でも最近ちっとも構ってくれないのよね〜。」冴子はちょっと拗ねた表情をし、純を見つめた。その艶かしい仕草に純の心臓は高鳴り、慌てて視線をそらした。顔が熱い・・・赤面してるのだろう。冴子にはこの初々しいデート相手の心情が手に取るように分かった。

「構ってくれないって・・・その祐樹君と・・・付き合ってるのですか?」

「あら?興味ある?」クスクス笑いながら冴子は純の顔を覗き込んだ。

「い、いえ、ただ、何となく・・・・・。」もう一口頬張り、純は宙を見つめた。

「ねえ、これからヒマ?どこか遊びに行こうよ。」しょっちゅう冴子が男に言われるセリフを使ってみた。

「え、え〜と・・・・。」純の心臓の鼓動がこちらにも聞こえてきそうだった。その姿がなんともいじらしくて可愛かった。・・・・今度私もこんな風にリアクションを見せてみようか・・・・冴子はそう考え頬杖をついた。昼食時が近付き、カフェ内は混み始めた。そのままだと冴子の顔見知りに出会うかも知れない。

「行こ。」冴子は立ち上がった。

「え?行くって、何処へ?」純はキョトンと冴子を見た。

「モタモタしてたから時間切れよ。今日は私に付き合う事に決まり!」

「え?そ、そんな・・・・。」冴子に手を引かれ、純はまたしても赤面した。

 

「映画観ようか?」

「いえ、今特に観たい物は・・・・。」

「よしっ、じゃあボウリングだ。」

「ごめんなさい、運動は苦手で・・・・・・。」

「ウ〜ン・・・じゃあカラオケ?」

「僕・・・音痴なんで・・・・・。」純はうなだれた。実際、彼の休日はさっきの場所での読書か、図書館ぐらいなものだった。冴子につまらない男という印象を与えてしまったに違いない。

「僕、もう帰ります・・・。」情けない思いに駆られながら純は言った。

「待ちなさいよ!私に恥かかせる気?」

「いえ、そんな・・・恥だなんて・・・ただ、僕と居るとつまらないでしょ?」純は指を絡ませていじけていた。

「ふふっ、じゃあね、私ん家行こ♪」冴子は前かがみになり純のおでこをツンッと押した。

「え?」

「イジイジしてる子は嫌い。レディに招待されてまさか断るつもりじゃ無いでしょうねえ?」

「あ、は、はい。」純の顔に少し明るさが戻った。

 

「うふふ、退屈な休日だと思ったけど、やっぱ外には出るもんね〜。」冴子はすっかり上機嫌だった。

「あの、冴子さん・・・・。」

「ん?なあに?」

「冴子さんの家で何を・・・・。」

「ん〜?何がしたい?」

「い、いえ・・・・。」純はまた赤くなり、俯いた。一つ一つの動作がとても愛らしい。由梨の事をショタコンと笑った冴子だったが、今思えば彼女の嗜好も分かるような気がした。

「いらっしゃいませ。」冴子はかしこまりながら、扉を開けた。

「お邪魔します。」純は行儀よく会釈して中に入っていった。

「あそこのカフェのケーキ、おいしかったでしょ?私いくつかレシピ知ってるから純君習ってかない?」

「え?本当ですか?」純の笑顔が輝いた。女性の部屋に入ってどうすればいいか困っていた純にとっては、この上ない助け舟だった。

「じゃあ、早速始めるわよ。純君そのエプロン貸してあげるね。」

「はいっ、お願いします。先生。」2人は向かい合って笑った。

 

2人の仲睦まじいクッキングは順調に進んだ。

「もうすぐ出来上がりね。純君クリームの用意は?」

「いつでも良いです。」

「ふふ、純君呑込み早いね。いい奥さんになれるわよ。」

「やだなあ、からかわないで下さいよ。」

2人は出来上がったケーキを食べ、暫く会話を楽しんだ。もう夕方近くになり、冴子のマンションにオレンジ色の光が差し込んでいた。

「ねえ、純君・・・・・。純君は彼女とか居ないの?」

「はは、僕の学校は男子高だから・・・。」

「外に出れば出会いいっぱいあるじゃない。・・・・年上の人って嫌い?」

「え?え、え〜と・・・・・その人が好きだったら、上でも下でも・・・関係無いと・・。」純の呂律が回らなくなって来た。

「私、君の彼女に立候補しちゃおうかな〜?」

「え、そ、そんな、冗談は止めてくださいよ。」

「なあに?私じゃダメ?・・・・君にとってはオバサンだしねえ・・・・。」

「そ、そんな事無いです!冴子さんは・・冴子さんは・・・・。」

「クスッ、私は何?続きを言って。」

「とっても綺麗だし、料理も上手で優しいし・・・・。」

「そんな人が彼女だったら嬉しい?」

「・・・・・はい。」冴子はすっと純の頬に手をやった。

「・・・・冴子さん?ウムッ!」純と冴子の唇が重なった。純の眼鏡が顔からズれ床に落ちた。

「ムムウウ・・・・。」純は言葉を発せないまま、夢中になって冴子に抱きついた。

 投稿の目次   ボーイフレンドUをみる    その2に続く

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