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ボーイハントU おしおき (1)
作:michi
「あの・・・智彦君・・・・。」クラスメートの女の子が呼び止めた。
「うん?何?」サッカーボールを抱えて智彦が振り返った。
「今度みんなでクリスマス会をやるんだけど・・・智彦君も来ない?」女の子は顔を赤らめていた。彼に好意を持っているのは傍から見ても明らかだった。佐倉智彦、中学一年生。活発な性格にスポーツ万能、幼さが残る可愛らしいルックスで、モテる男子の典形型だった。だが、彼の欠点は・・・・・。
「バッカじゃねえの?お前等まだそんな幼稚な事やってんのかよ。」少々口が悪いのである。
「な、なによ!そんな言い方。・・・せっかく誘ってあげてるのに。」女の子は泣き出しそうな顔で言った。
「へんっ、誘ってあげるって何だよ。俺は誘って欲しく無いぜ。どうせお前等ブス共が寄り添ってくだらないお喋りしてすごすんだろ?ガキと一緒なんざ御免だね。」・・・・かなり口が悪い。
「自分だってガキじゃん!もういい!智彦君のバカ!」女の子は走り去って行った。
「フンッ!」智彦は悪びれる様子も無くサッカー仲間の下へ走って行った。
「よう、知ってるか?校門前のマンション。」友人が智彦に話しかけた。
「知らね。何かあるの?」智彦は眉をひそめて聞いた。
「それがよ・・・・丸見えだって・・・女子大生のハ・ダ・カ・・・・」ウククと卑猥な笑みを浮かべて彼は智彦に耳打ちした。何でもそのマンションの一室に女子大生が住んでるのだが、無頓着なのか露出狂なのか知らないが、カーテンもかけずに風呂上りの姿でうろついてるらしい。この学校の男子生徒が偶然それを見て以来、密かに噂話となっているのだ。
「何だよそれ?バカバカしい・・・・。実はババアだったってオチだろ?」
「女子大生って言ったじゃん。ルックスはまあまあだけどスタイルはこんな・・・・」友人は両手で曲線のラインを描いた。抜群のプロポーションだと言いたいのだろう。
「ハハハ、そりゃきっと売春婦だ。見たら金取られるぜ、きっと。」智彦は鼻で笑い練習場へと駆けて行った。
「女子大生かあ・・・・。」智彦はどちらかというと年上の女性に興味があった。ガキっぽい同級生など話すだけでも鬱陶しい・・・・そんな思いが彼の悪態の原因かもしれない。
「・・・・・・・」下校時、智彦は何気無くその話題のマンションを見上げた。3階建て程の高さなので角度によっては何処の部屋も覗くのは可能だろう。でも中の住人は意外と2階以上の高さに過度な安心感を持つのかも知れない。いつしか聞いたことがあるが高層マンションの上階の人には鍵をかけずに出かけてしまう人が案外いるらしい。治安が悪くなったとは言え、まだまだ日本人の危機意識は低いようだ。
「!」突然智彦の目に人影が映った。だがそれはすぐに部屋の陰に隠れた。
「バッカじゃねえの。」自分に向けた言葉だった。つまらない噂話に感化されつい見入ってしまった自分を智彦は恥かしく思った。
翌日の授業中、智彦の机の上に丸めた紙が投げ込まれた。男子生徒の間でリレーされているらしい。
「?」智彦は教師の目を盗み紙を広げた。
{健康な男子諸君!サンハウスUの艶女を捕らえて見ないか?写真提供者には2000円。下着をゲット出来た者には・・・何と1万円の賞金が与えられるぞ!(勿論、下着1点に付き一万円。10コ集まれば10万円!!)}下手くそな字のコピーだった。サンハウスUとは言わずもがなあの校門前のマンションの名前である。
「これ何処から来たんだ?」休み時間になり、智彦を含む男子生徒が輪となった。
「知らねえ。朝学校に来たら校門の壁に張り付いてたんだよ。」そのコピーの第一発見者が首を傾げた。
「写真だったら何とかなるんじゃねえか?」
「バカ言え。見つかったら捕まっちまうぞ。2千円ぽっちで割が合うかよ。」
「でも下着1つで1万円はいいな。2、3枚でもある程度の物が買えるぜ。」
「ば〜か。どうせ出来ねえと思ってるからこんな値段つけてんだよ。」
「でも、仮に写真や下着取ったって・・・・何処に持ってけば金に替えてくれるんだ?」
1人の男子の疑問に皆、黙りこくった。
「ほら見ろ、やっぱ悪戯だって。間に受けてチャレンジする人間を陰で見て笑おうって魂胆だぜ。」その言葉に皆の落胆の息が洩れた。
「・・・・・面白えじゃねえか。」沈黙を破ったのは智彦だった。
「?面白いって・・・・智彦、まさかお前・・・やるつもりなのか?」皆がどよめいた。
「ああ・・・・1つに付き1万円だろ?100個で百万円じゃん。」智彦は不敵に笑った。
「おいおい、女優じゃあるまいし、いくら何でも百枚も下着ってありえないだろ。」
「そうかな〜?うちの姉ちゃん80枚はパンツもってるって言ってたぜ。」
「お前の姉ちゃん、太り過ぎでサイズが合わなくなる度に買い換えてんだろ?そりゃあその位行くわな。」笑い声が上がった。
「ああ〜!分かった。智彦君いろんな所から下着集めるんでしょ?それを全部あの女子大生の物と言って・・・・。」1人の男子生徒がポンと手の平を叩いたが、智彦は首を横に振った。
「そんなセコい事しねえよ。俺は金が目当てじゃねえ。コレを出した馬鹿に一泡拭かせてやるんだ。やれっこ無いと思ってる下着ドロをあっさりやっちまったら慌てるぜ、きっと。」
「それはそうだが・・・・・。」皆が唾を呑込んだ。
「物を集めてだなあ・・・写真も付けて、元の場所にこう書いて貼ってやるんだ。金払うまでしつこく追いかけるって。筆跡鑑定してでも正体暴いてやるってな。傑作だろ。」智彦はフンッと鼻を鳴らし得意げに皆を見回した。
「・・・・智彦。自信と勇気があるのは認めるが・・・やめとけ。」智彦の後ろにいた男子が肩を叩いた。
「そうだよ、智彦君。捕まったら痴漢どころの罪じゃないよ。女の子達からも白い目で見られるようになるし・・・・。」
「フンッ、あんな猿どもにどう思われようが知ったこっちゃ無いね。」智彦はソッポを向いた。
「でも智彦だったらやれるかもな。なんたって校内一のストライカーだからな。」
「足が速いからって泥棒に向いてるとは・・・・食い逃げなら分かるけど。」
「まあ見てなって。この怪盗佐倉様のテクニックをな。。」智彦は自信満々で皆に言った。
智彦の父親の趣味はロッククライミングだった。幼い頃はよくつきあわされ正直ウンザリしていたが、次第とハマリだし、大人でも難関な崖をあっさりクリアした時は自分の身軽さに智彦自身も驚いた。それからというもの、小学校の頃に流行ったサバイバルゲームでも智彦の運動能力は発揮され、廃ビルがフィールドの時などは次から次へと予想外の所によじ登り敵を驚愕させた。今所属しているサッカーチームでも早々にレギュラーである。
「右から4番目・・・・・。」目当ての部屋は2階の204号室である。丁度角部屋になっていて例の窓の隣は奥行きのあるベランダだ。智彦は先ず裏手のブロック塀を登り、壁の微妙な凹凸を利用し、スイスイとマンションの外壁を登っていった。
「馬鹿みたいだ・・・・。」また智彦は呟いた。今までのお遊びとは違い、これはれっきとした犯罪である。写真や下着を手に入れたって賞金を獲得出来るか・・・・多分無理だろう。誰かが言った通り只の悪戯に違いない。――しかし、そうではあっても智彦はこの行いを中止する事は出来なかった。思春期特有の好奇心と冒険心、そして女子大生の部屋という甘美な誘惑が智彦の背中を押すのであった。
「よっこらせっと・・・・。」拍子抜けな位、智彦はあっさりと目的地に着いた。見をかがめて周りの様子を警戒する。静かだ・・・・・どうやら主は留守らしい。出入り口の隣の物干し台に洗濯物が吊るしてあった。
「お?ラッキー。」Tシャツとジーンズの間に些少な布切れが数点。女物のパンティーだった。その奥にはブラジャーが並べられてる。それだけで十数点の収穫だった。
「意外と簡単だったな。これで10万か。」当ての無い賞金だが、智彦は達成感に満たされほくそ笑んだ。獲物に手を伸ばした瞬間、
「ん?」智彦の目は部屋の中に釘つけになった。半開きのカーテンの隙間にその部屋の中が覗ける。部屋の中の床には・・・・・赤、白、黄、青の様々な色のバリエーションで大量のパンティが並べられてた。縦に10列、横に10列・・・全部で100枚だ。
「ワケわかんね。女はこうやってパンツ干すんか?」智彦は無意識に引き戸の取っ手に手をかけた。
「わ?」スルスルと戸が開いた。鍵は掛かってなかったのである。
「ほんっと、無用心だな。信じられね。」半ば呆れながら智彦は中に入った。タイマーでもかけてるのだろう、エアコンは稼動しており部屋の中はかなり暖かい。テーブルにはダイレクトメールが数枚・・・・宛先名に川端由梨と書いてある。
「ココの奴の名前か・・・。」幼い浸入犯は征服感に満たされ笑った。
「さて、全部戴いちまうか。悪く思うなよユーリちゃん・・・・・。」指をポキポキ鳴らし智彦は床に並べられているパンティーに手を伸ばした。その時・・・・。
「神妙にしろ!」背後で女の声が響いた。
「わ、わわっ!?」反射的に智彦は出口に向かって飛び出ようとしたが、ガシッと足を引っ掛けられ派手に床を転げ回った。その拍子で大量のパンティが宙に舞った。
「イタタタ、何すんだよ!この馬鹿!」
「それはコッチのセリフよ。あなた、人の家で何してんのよ?」智彦の目の前では由梨が仁王立ちで睨んでた。
「そ、それは・・・・・。」智彦は口をつぐんだ。明らかに自分には正当性が無い。このまま警察に突き出されてもおかしくないのだ。
「あなた泥棒?それとも痴漢?」
「・・・両方だよ。悪いか!」もはや開き直るしか無かった。
「悪いに決まってるでしょうが!」
「・・・・畜生・・・・。」もはや人生が終わったも同然だ。今まで敗北感を味わった事の無い智彦は悔し涙を浮かべた。
「ねえ・・・もういっぺん聞くね。どうしてこんな事したの?」由梨は今度は優しく訊ねた。智彦は黙ってあのコピーの紙切れをポケットから出した。
「・・・・・!あははは、コレ見て来たって訳ね。バッカみたい。」由梨は怒るどころか大声で笑い出した。
「うるせえな・・・もういいだろ?とっととオマワリにでも何でも突き出しやがれ。」‘馬鹿みたい’と言うセリフは智彦もよく使うが他人に言われるのは初めてだった。智彦は腹を決めて憎憎しく言葉を吐いた。
「君の度胸に免じて警察は勘弁してあげる。」意外だった。
「え?」智彦の表情に光が戻った。
「勘違いしないで、許す訳じゃないんだからね。警察じゃなくて私に逮捕されるのよ。あなたは。」由梨はニンマリ笑って智彦の腕を掴んだ。
「何だって?ふざけるな!」智彦は立ち上がり逃げようとした。だが、腕はがっちりと由梨に掴まれ、足は空しく宙を切る。スピードでは分が有っても力はまだまだ大人の女には敵わない。
「なによ?現行犯は警察で無くても逮捕できるのよ。・・・・ま、もっともその後の尋問はちょっとイケない事なんだけどねえ〜。」由梨はクスクスと笑った。
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