九輪君の場合・完結編    (2) 

                        
作:れいのっく

 何時間が経ったろうか。
 視界を闇に閉ざされ、鋭敏になった感覚の中で、九輪は淫臭に侵されてひたすら時が過
ぎるのを待った。
 強い臭気を嗅ぎ続けたせいで、嗅覚はほとんどマヒ寸前だった。それでも息を吸うたび
にすえた女の匂いが鼻を満たし、強引に、執拗に、そして淫らに、九輪の性欲をかきたて
る。
 あふれ出た唾液で、口の中のパンティはぐっしょりと濡れていた。淫汁の沁みこんだパ
ンティは口の中で徐々に唾液と混じり合い、粘りつく布地が、沁みだす淫汁が、九輪の口
一杯に女の味をからませる。
 薬と淫臭にペニスは硬く勃ち上がり、腹にぺったりとはりついていた。少し身をよじる
だけで亀頭と皮膚がこすれ、身もだえするような快感が走る。一週間も射精を禁じられた
それは今にもはぜそうに張り詰めていて、軽く触れられただけでもイッてしまいそうだ。
もし手が自由ならば、恥じらいも何もなく自分で慰めているだろう。
 それすらもできず、濁った官能の檻の中で九輪はもがき続けた。気の狂いそうな疼きに
体中を侵され、ただひたすらにもがき続ける。
 そしてぐったりと力を失い、半ば意識を失いかけた頃に、再びドアが開けられた。

          ◇

「……ふふ、いい格好だこと」

 ベッドの上に裸で縛られた九輪を見下ろし、篠宮綾は薄く笑みをもらした。
 彼女の入ってきた気配に気付いたのか、九輪はけだるげに身じろぎする。しかし視覚を
奪われ混濁した意識の中では、彼女の正体には気付かないだろう。

「やぁん、素敵っ♪ 九輪クンってばすっごいやらしい格好よぉ! ね、ね、お姉さまぁ。
早く食べたーい♪」

 彼女の腕に抱きつくようにして、一緒についてきた留美がはしゃいだ声を出す。大きな
瞳は獲物を見つけた猫のように爛々と輝き、横たわる九輪を見下ろしている。

「……!?」

 目隠しをしていても、九輪の動揺している様子は伝わってきた。動かない四肢をよじり、
首をめぐらせ、状況を見定めようとしている。
 しかしこの状態では何も分からないだろう。綾にしても、わざわざ自分から正体をばら
してやるつもりはない。
 まぁ、犯してやれば、そのうち思い出すかもしれないけれど。

「どうかしら? 気に入ってもらえた?」

 二人の後ろから千紗が顔を出す。綾は彼女を振り向き、形の良い唇にこぼれるような笑
みを浮かべた。

「ええ、とっても。話が来たときはびっくりしたわ。まさかあなたがこんなことをするな

んて、思いもよらなかったもの」

「私だって。綾さんがもう彼を犯したことがあるなんて……ね」

 九輪は知る由もないが、名家である篠宮家と神浪家の間には親同士の付き合いがあり、
綾と千紗も以前からの友人だった。千紗が九輪を監禁していると知った綾は過去に自分が
彼を犯したことを告げ、この別荘に案内させたのだ。
 彼女の復讐を手伝うために。

「ね、ね、お姉さまぁ。食べちゃっていいかな? もうほら、九輪くんあんなにカウパー
出しちゃってさぁ、早く食べてほしいって言ってるよ?」
「待ちなさい、留美。今、主賓が来るから……」

 振り返り、綾は大きくドアを開け放つ。その狭い隙間をくぐるようにして、キョウコと
ミナコ、そしてマコが、一人の少女を縛りつけたイスを運び込む。

「こらぁ! 放せ! 放せってば!」

 全裸に剥かれ、四肢をそれぞれ手すりと脚に縛り付けられてはいたが、少女はさかんに
身をよじり抵抗を試みていた。部屋の中で待ち構える三人にもキッと強い視線を向け、鋭
く睨みつける。
 と。
ベッドに縛り付けられた九輪の無惨な姿を見て、彼女の口から驚きの声が漏れた。

「せ……先輩っ!?」

 その声に、九輪も彼女に気付いたようだった。驚いたように身をよじり、声を出そうと
する。しかし口の中に詰め込まれたパンティのせいで舌が動かせず、言葉を発することは
できない。

「先輩!? どう……したの、そのかっこ……うわ、そんな……何? なんなの!?」

 混乱したように、彼女――澪はあたりを見回した。
 工藤澪。九輪の後輩にして恋人だ。正直、彼女を連れてくるのが一番の難関だった。言
葉巧みにこの別荘へと連れ出し、隙をついて薬で眠らせ縛り上げる。格闘の専門家だけあ
ってもし暴れられたらと冷や冷やしたが、綾やキョウコ達の協力で首尾よく捕らえること
ができた。
 これでゲストはそろった。
 後は始めるだけだ。

「ちょっと! 何なんだよ、あんた達! ボクと先輩をどうするつもりだっ!? こんな
……こんな格好で……!」

 顔を赤らめ、澪は千紗にかみついた。涼しい顔でその罵声を聞き流し、千紗はビデオカ
メラの設定に取り掛かる。

「こらっ! 無視するなっ! 放せよっ! はな……ひゃぅっ!?」

「ダメだよー、女の子がそんなはしたないコト言っちゃー」

 抱きつくようにして、マコが背後から彼女の乳首をつまんだ。繊細な指先でくりくりと
いじり回すと、澪は一転して辛そうな表情になる。

「やっ……ちょ、やめ……ひぁっ……」

「わー、マコ姉ってば、やらしーぃ」

 前から身を寄せ、留美が加勢した。身動きの取れない肢体を愛撫しつつ、舌先で乳房を
舐め上げる。

「ひゃぅっ!? や、やめ――」

「あはは、敏感♪」
「あはは、やらしーんだー。まだ子供なのに、そんなに九輪クンに開発されちゃってるの
ー?」
「子供って言ったって、マコ姉とあんまり変わんないじゃん? ほらぁ、おっぱいの大き
さとか、そっくり♪」
「うるさーい」

 留美のまぜっかえしに、マコは不機嫌そうな顔になる。
 二人が実の姉妹だったのも幸運だった。さもなければ、留美のルートからキョウコ達三
人に連絡を取ることはできなかっただろう。
 童顔で幼児体型なマコに、コケティッシュでグラマーな留美。見た目はあべこべだがマ
コの方が姉だ。「胸とお尻の栄養を妹に取られた」と、キョウコによくからかわれる間柄
らしい。
 正直、自分にひどいことをした彼女たちに協力を仰ぐのには抵抗があった。しかしこの
復讐を成立させるためにはキョウコたちの協力が不可欠だったし、それに彼女たちに倉庫
に連れ込まれたからこそ、自分は九輪と結ばれることができたのだ。その点に関しては感
謝すらしている。
 二人が澪を黙らせてくれたおかげで、千紗は手元の作業に集中することができた。
手持ちのデジタルビデオ。各種つまみを調整し、同調を確かめる。その脇では彩がハーフ
フェイスのヘルメットをかぶり、千紗の作業に合わせて細かな指示を出していた。

「ね、ね。それ何?」

 興味津々という様子で尋ねるキョウコに、ヘルメットを脱いだ綾が妖しく笑みを返す。

「篠宮電子――パパの会社が作った、最新鋭のインターフェースよ。体験してみる?」

 言われるままにメットをかぶり、キョウコは驚きの声をもらした。

「うわっ。これって――」
「どう? 自分が見える?」

 キョウコの正面に回った千紗が、カメラで彼女を撮る。メット内のディスプレイには、
彼女が撮っている映像――つまりメットをかぶったキョウコのアップが映し出されている
はずだ。

「うわ、すご! 普通にアタシ見てるみたい! 全然違和感ないよっ」
「そう、じゃ準備は完了ね」

 キョウコからメットを脱がせ、綾は姉妹にもてあそばれる澪の元に歩みよった。有無を
言わさずメットかぶせ、顎紐を固定する。

「っ!?――な、何!?」

 わけが分からず、澪は身体をくねらせた。マコと留美がその肢体に絡みつき、千紗が正
面からカメラでその姿をとらえる。

「やぁっ!? 嫌っ、やだぁっ!」

 あられもない自分の姿を眼前一杯に映し出され、澪は悲鳴をもらした。千紗はゆっくり
と間を詰め、留美の愛撫で濡れはじめた彼女の股間に向けカメラをズームアップする。

「やだっ! やだ、やだ、やだぁッ! せんぱいっ!? 先輩、助けて――!」
「ん――っ! んん……ッ!」

 澪の悲鳴を聞き、九輪も狂ったように身をよじる。手錠の鎖が鳴り、ベッドが軋む。し
かし弛緩剤を打たれた身体に戒めを外すだけの力はなく、口の中を満たすパンティは澪の
名を呼ぶことさえ許さなかった。
 暇そうにしていたミナコが黙ってベッドに上がり、後ろ向きに彼の顔をまたいだ。スカ
ートの裾を押さえ、無造作に顔の上に腰を下ろす。

「――――っ」

 薄いスカートの布地越しに、アヌスが鼻に密着した。スカートの下には何も履いていな
い。脱いだパンティはガムテープで塞がれた口の中だ。反射的に鼻から空気を吸い込み、
九輪はどぎついその臭気に咳込んだ。

「ねぇ、まだ? もう、待ちくたびれちゃったんだけど」

 ゆったりと腰を揺すり、ミナコは催促した。

「ごめんなさい、ちょっと待っててね。もうすぐだから」
「そう、分かったわ。……もう少し待ってね、九輪くん。もう少ししたらイカせてあげる。
それまでは私の匂いで我慢してね……」

 鎖をがちゃがちゃと鳴らし、九輪は悶絶する。鼻筋をヒップの割れ目に巧みに挟み込ま
れ、鼻孔は狙いを定めて押し付けられた窄まりに埋没し抜け出せない。
 一週間洗っていないミナコの下半身は強烈な匂いで彼を苛んだ。薄いスカートの下、蒸
れた汗の匂いにすえた排泄物の匂い、熟れた女の匂い。それに鼻にすり込まれた恥垢の匂
いが混じりあい、強烈な異臭となって意識を侵す。

「どう? おまんことお尻の匂いを一緒に嗅げるなんて、すてきでしょう? 匂いだけじ
ゃないわよ、後でちゃんと味わってもらうから、覚悟しててね……」

 うっとりと腰をくねらせ、ミナコは九輪をいたぶった。口を閉ざされた彼は鼻から息を
吸うしかない。鼻孔とアヌスの間にある1ミリにも満たない布地。その隙間から必死で呼
吸を貪り、九輪は汚れた臭気を味わわされる。
 目隠しの下で涙を流し、ミナコの下で半ば意識を失いながら、九輪はただひたすらに耐
え続けた。
 そんな二人には構わず、残る五人は澪を取り囲んでいた。
 前後からマコと留美の愛撫を受け、澪はツボを心得たその責めに身を奪われていた。

「く……っ、ん、んぅ……はぁ……っ」

 固く閉ざされた唇から、時折り切なそうな呻きがもれる。ヘルメットの中でぎゅっと目
をつむり、彼女は全身を這い回る指や舌の責めに耐えた。
 目を開ける気にはなれなかった。なぜなら、目の前のディスプレイには、きっと――

「ふふ。濡れてきたみたい」

 澪の両足はM字に開かれ、イスの手すりに縛りなおされていた。その大きく開いた股間
には留美の指が差し込まれ、にちゃにちゃと卑猥な音を響かせている。
 その股間をアップで映し出し、千紗はくすくすと笑みをもらした。

「ふふ、こんなに濡らしちゃって……気持ちいい? いいよね? 留美ちゃん、もっとや
ってあげて?」
「あはは、りょうかーい。いっくよー♪」

 リクエストに応え、留美が指の動きを速める。しなやかな指が敏感な部分を的確に責め
たて、電流のような快感に澪は背をのけぞらせて喘いだ。

「あぁぁ――――ッ!? いぁ、いあぁぁぁぁぁっ! あぁあ……っ!」

「ほらっ、ほらっ、ほらっ。ほらほらほらぁ。どう? イイでしょ。イキそうでしょぉ?」

 失禁するような勢いで愛液があふれ、イスの表面を濡らした。身もだえする澪の唇を綾
が奪い、キョウコとマコも彼女の首筋や小さな乳房を弄ぶ。

「んんっ! んふぅぅ! ん――っ!」

 たまらずに目を開け、澪はとろけそうな自分の秘唇を目にした。耳元のイヤホンからは
淫らな水音がもれ、嫌でもあられもない自分の姿を教えてくれる。ぼうっと霞む意識の中
で口から涎を垂れ流し、彼女は快感の奔流に身を任せた。

「おっととと……危ない危ない、まだイッちゃダメだよぉ」

 絶頂に達する一歩手前で、留美は指を引き抜いた。それを合図に他の三人も澪から離れ
る。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……?」

 吐息をつきながら、澪は解放された安堵感と――寸前でイケなかったそのじれったい官
能に、思わず周囲をうかがった。

「ふふ……まだ、だめ。そう簡単にイカせてなんて、あげないからね」

 一旦ビデオカメラを置き、千紗は試薬品のチューブを手に取った。ヒスプロミンのクリ
ームをたっぷりと指先に取り、澪の秘唇にすり込む。

「ひぁっ!? な……何!? ちょっ……やだ、やめてよぉ……!」

 身をよじり、澪は抵抗しようとした。粘膜を通じ、催淫剤がじんわりと彼女の中にしみ
こんでいく。目一杯じらされた後での薬責めだ。今はまだしも、もう少ししたら気も狂い
そうな疼きが彼女を襲うだろう。
 綾やキョウコ達も服を脱ぎ捨て、クリームを淫唇に塗りこんでいた。クリームだけでは
ない。少し前に錠剤も飲んでいたため、彼女達の股間は既に熱く潤んでいた。乳首もツン
と上を向いて立ち上がり、目には淫らな光がきらめいている。

「……さて、と。準備はいいかな?」

 カメラの最終調整を終え、千紗はベッドに向き直った。縛り付けられ、もがく九輪の上
にミナコが腰を下ろし、うっとりと腰を揺すっている。それを取り囲む、四人の少女。

「いやぁぁ! 先輩っ! せんぱぁいっ!」

 目の前に映し出されたその光景に、これから起こることを予想してか――身をよじり、
澪が悲鳴を上げる。その声に、千紗はカメラを回しながら薄い笑みをこぼす。
 自分。綾、留美。キョウコ、ミナコ、マコ。澪。そして九輪。
準備は整った。
 復讐の始まりだ。

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