吸血鬼小説「女学生がこわい」(1)
                                              作:編髪(あみ)

 篤史は、ある私立の男子高校の二年生。毎日、同じ時間の電車に通っていると、よく同じ顔触れのひとたちに出会うこともある。
 全然知らない、よその学校の生徒でももちろん、よく同じ顔の子を見かけたりするため、当然、そのなかには気になる女の子もいる。特に篤史のように男子校に通うようになると女の子とはすっかり縁もなくなっているため、よけいに女の子のことが気になりだす。
 まして、二年生も後半になると、篤史の学校がまた進学校であるためにいやでも大学受験のことで押したてられ、このため今までにくらべて趣味などに浸ったり遊んだりしていられなくなり、そのために、毎日の楽しみといえば、せいぜい通学中の電車のなかでかわいい女の子が見られるぐらいにしかならなくなっているのである。もちろん、しゃべったりすることはず、やはり、遠くから横で眺めているだけしかなかったのであった。

 夏休みが終って二学期になった直後のこと。篤史は初めて見かけてひと目で好きになった少女がいた。その少女は、女学校でよく見かける、髪の毛をふたつの三つ編みにまとめたおさげをしていて、その毛先はスカートの下裾にかかりそうなくらい、ちょうどウェストのあたりで黒いゴムを巻いて毛先をとめ、そこからもお尻の上をなでるほどまだ長めにあり、少女の存在を気にするようになったのである。
 少女は毎日セーラー服で通っており、まだ、夏服で上半身は白いシャツ姿だったため、黒髪が余計印象的にうつったのであった。事実、少女と同じ制服の者はほかにも三つ編みの女の子が多く、彼女らの通っている学校は、全員が三つ編みと決められている私立の女子校のようである。
 そのため、今までいくらでも三つ編みの子など珍しくなかったはずであるが、彼女のように背が高くてスカートの先まであるぐらいだと、篤史にとってはよけいに目につくようだった。
 秋も深まって夏服から衣替えがあり、その学校の少女たちは赤い線の入ったセーラー服を着るようになっていた。黒髪はこのために目立たなってはきたが、いつもと同じように編んで後ろに下げている姿は、篤史の心をときめかせつづけていた。

 目当ての少女が下車駅に着いて降りて走ってゆく後ろ姿では、特に三つ編みの髪の毛が大きくとびはねるように、まるで生きているへびを思わせるような、そのくらい萌えていたのであった。事実、篤史の下半身では、黒い学生ズボンのチャックのあたりが少女の姿を目にするたびにふくらんでいたのである。

 篤史は、もちろん小さい頃から、そうした髪の毛の長い女の子にあこがれていた、いわゆる「髪フェチ」であった。そういう気持ちを全く他人に言ったこともなく、ひそかにあこがれつづけ、しかも、どちらかといえばそういう女の子とつきあいたい、恋人にしたいというより、むしろああいう女の子にいっそ化けて髪の毛を自分でも編むことができたらなんて考えていたのだった。
 そして、中学の時は校則が厳しかったけど、高校では実は髪の毛を長髪にすることが許されるようになったため、実は肩までいま篤史は髪の毛を伸ばしているのである。けれど、あの子にはかなわないなあ、そう思いながら、篤史は少女のことを気にし続けているのであった。

 ある日の満員電車で、いつもの駅から目当ての少女が乗って、しかも偶然に篤史がいるところに近づいていた。いつもの三つ編みおさげの姿である。篤史の好意に少女はまだ気づいていないようで、目も合わせなかったが、ちょうど篤史のいるところの前に立って吊革につかまり始めたのであった。
 さらに彼女は前に垂らしていたそのおさげ髪を両方とも背中に払いのけたのである。やった、今日は心ゆくまでこの子の髪の毛を眺めていられる…篤史はより興奮して性器をまたぼっきさせ、しかも精液も出て垂れてくるのであった。
 三つ編みにするために何本もさしこまれているピンセット、はえぎわから耳もとですぐきつめにまじわっている三組ずつの黒髪、下まできれいにそろっている髪の編み目、きっちりと真ん中で分けられたうなじの上の割れ目など、篤史の心をそそるばかりであった。
 顔をじろじろと見ていたら怪しまれるけれど、後ろからじっと見続けているぶんには文句も言われないだろうと。けれど、興奮もしてきて思わず痴漢をやってしまいそうにもなった。ヌード写真など見るより、こんな長いおさげ髪のほうが興奮してしまうくらいの「髪フェチ」で、着ていた下着も精液でぐちょぐちょに濡れてきているのを感じるとちょっと困ってきたなと思うようにもなった。

 しかも、電車が揺れて時に、少女の髪の毛も揺れてついに毛先が篤史の手にもかかってしまい、少なくとも篤史は、彼女の髪の毛にさわってしまったことになったのである。ところが、もっと篤史は心がむしばまれるようなものを見たのだった。
 髪の毛のはえぎわから耳もとのところで三組の髪の毛を最初に交差させているあたりで、歯型のあとが見えており、それと、三つ編みの長い髪の毛の途中が少し赤みがかかっていました。
 こんな長い髪の毛の女の子だと、そういうこともあるのかなという程度に篤史は思っていた。そのうち、電車がとちゅうのある駅に停車した時、彼女は吊革をはずしてもう一方の手に握っていたかばんからなにか紙を取り出していた。
 少女の通っているらしい学校が、どうやら次の日曜から文化祭らしかった。少女の肩越しに視線をあててみると、黒髪学園という文字が目についた。もしかして、この子の通っている学校はこの電車の途中にある黒髪学園というところなのかということが篤史はわかったようで、それならその学校の文化祭に行ってみようという決心をしたのであった。
 ちなみに篤史の通う男子高校はもっと先のほうで、黒髪学園のある駅はほとんど静かな環境の場所で渋谷や新宿などのようなにぎやかさもなく、篤史も降りたことのない、一日中禁煙と定められている駅であった。

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