あっくんの映画撮影            (1)

                                            作:テンちゃん  

 
その女と初めて会ったのは俺が26になるコンパの時だった。やはりというか当然というかその子はグループの中では最も輝かしい光を放っており男性陣の注目を一身に集めていた。
今年25よ、という彼女はとにかく笑顔がとてつもなく可愛く、テニスを趣味にしてるだけありその体はウサギのようなシナリを帯びつつも見事なまでのスタイルを堅持し続けていた。だが、そんな彼女にも一つだけ欠点があった。
それは、なにしろ酒が入ると人が変わったように淫乱になることだった。
 
そう確かに感じたのは付き合い初めて間もない頃だった。
 
俺は将来この子と結婚する事になるんだろうなぁ、と漠然と付き合ってはいたがなにしろ酒が入るとその子は肉体自体が豹変するみたいになめまかしくも変貌し、やはり結婚するとなるともっと家庭的な子がいいんでないかなぁ、ちゃんともっと真面目に考えないといけないんだろうなぁ、などと月日を追うごとにそれはお互い少しずつではあるが距離を置くように俺と彼女の心は離れていった。
 
毎日かかさずしていた電話がやがてメールに変わり、そのメールも二日おき、三日おきと、ほとんど事務作業のようになっていく。
 
別れも近いとお互い感じられたそんなある日、1ヶ月ぶりに彼女から電話が来た。
その頃、何かあれば電話はほとんど俺からかけていたのでイヤな予感を感じながらも携帯のボタンを押した。
 
「アっくん、、、、あのさ、、、別れるんなら、、、、、、、、、、それはそれでいいけどさ、、、、、、、、あのね、、、、なんていうか」
 
その声は間違いなく酔っていてどこか甘えるような、それでいて覚悟を決めたような女、というものの声だった。
 
「うん、、、はっきり言うけどアっくんとは、、その、、なんていうの、、セフレで居たいんだ、、こんなこと言うの、あたし、、おかしいよね」
 
きたな、と俺は思った。同時にやっぱりな、とも思った。俺の予感は悪い時だけ当たる。
その頃はハッキリ言って何をしてもどこに行ってもお互い冷め切っていたし唯一お互い満足できたのはセックスだけだった。
 
「あ、そう、、、やっぱそんな話しだと思った、、、、、、、、、ふーん、、、、そうなんだ、、、ま、俺はいいよ、それで」
 
かなりの悔しさと男としてのプライドを傷つけられた俺はそれを彼女に悟られないように努めて冷静を装いそう言った。
 
その後、彼女には彼氏が出来たのか、数ヶ月はお互い会える時だけ日頃の暮らしのなかで溜まった憂さを晴らすように体を交じらせた。しかし、愛のないそれも長くは続くはずもなくセックスすらも倦怠感で覆いつくされていった。
 
彼女の出す喘ぎ声は露骨に演技と解り、お互い退屈な時間を潰すためだけの行為にふけった。
 
ある晩、ことが終わってお互いベッドのなかタバコを吸ってる時、突然彼女がこう言い出した。
 
「こんなことアっくんに言うのおかしいんだけどさ、、、、聞いてくれる?」
 
女はなんでいちいち質問するのに聞いてくれる?なんて言うんだ?俺はその問いを無視するよう言った。
 
「男とはうまくいってんのか?」 「ううん、、、、先月別れちゃった、、あれ、アっくんにまだ言ってなかったっけ?」 「覚えてね」
 
どうでもいいと俺は思った。一度別れた女。他にネタになる会話の糸口が見つからなかっただけ。
 
「またそうやって話し反らして、、、アっくん変わってないよね、、、いいからァァ、、あたしの話し聞いてよォ」
 
俺の肩を触ってくる。甘ったるい声。初めに聞いた時は心臓が躍動したもんだ。今はただ厚かましいだけ。
まさかまたよりを戻そうってんじゃないだろうな。勘弁してくれよ。俺は不意にそう思い彼女の濡れた瞳を見つめた。
 
「あのさ、、、周りに、、、もし居たらだよ、、、周りに童貞でかわいい子いないかな?、、、あたし、、ほら、知ってるでしょ?
童貞くん好きなんだ、、、、、あ、ごめんね、、、気ぃ悪くしたでしょ?ンフフ、、、顔見ればわかるもん」
 
このバカ女。何を考えてやがるんだ。俺と別れたあと他の男と付き合いそれすらも放棄した挙げ句、元彼の俺に童貞の彼氏を斡旋
しろだと?ふざけるな。この淫乱女。
俺はその時、彼女と付き合ってた頃聞いた噂を思い出した。いや、それが直接の原因で別れることになったのかもしれない。
 
(おまえらそろそろ別れんだろ?あいつ、童貞キラーって噂だぜ。おまえ知ってた?それもただヤるんじゃなくって犯しちまうんだとよ。なんつーの?逆レイプってやつ?ま、それは大袈裟だろーけどよ、エスっ気あるのは間違いないみたいだって。嘘じゃねーよ。
だってほら、あの子の女友達ってマサの彼女じゃん?俺、その女の子から直接聞いたんだからよ。)
 
俺は、だろーなって思った。前から年下好みなのは知っていたし酒が入るとホントにそうしかねない妖艶さが彼女にはあった。
続けて奴はこう言った。
 
(お前もあいつのこともうどーも思ってねーから言うけどよ。その喰われた野郎達が癖んなったんだろーな。とっかえひっかえあいつの部屋行くとこ俺のダチが見てんのよ。どー思う?お前ぜってー別れた方いーぜ。そんなヤリマン女)
 
本当に女のことが好きだったら奴のことを殴ってたかもしれない。だが俺は妙に冷静な気持ちでいられた。
 
「あたしってさァ、、、ヤられるよりヤっちゃう方好きなんだよねぇ、、、マジ、、エスだし。あははは!」
 
二人で居酒屋に行った時、そう言ったのを覚えてる。
今、隣りで寝ころびながら童貞野郎を紹介しろと言った女を俺は冷たい視線で見据えた。
 
「おまえさ、、、それ、、、、マジで俺に頼んでんの?」  「アっくん、そう言うと思ったァ、、、、やっぱ言わなきゃよかったなァ」
 
聞いておいて言わきゃ良かった。女はホント面倒だ。
 
俺は半ば呆れつつ缶ビールのプルタブを空けた。ふと、ある考えが閃いた。バカ女。それでいていい体。男を狂わすボディ。
 
「ま、、居ることは居るけどよ、、、、、、、タダって訳いかないな、それはよぉ」 「なに?、、、、お金?」 
「そんなちんけな事言うかよ、、、、、、」 「じゃ、、なによ、、、どうしたら」  「ビデオカメラ、、、、撮っていいか?」
「え、、、やだよそんなの、、、、どっかに流されちゃったらやだもん、、今ネットとかあるし」 
「それは絶対ねーし。約束する、、、、、、おまえ、、俺、信用できねーの?」
 
バカ女はわざとらしく首を横に振る。俺も別にそれで金を稼こうとは思わなかった。その後、彼女と2時間近く作戦を立てた。
 
俺の勤める工場には沖縄だか石垣島だかから来た金城という年端のいかぬ小僧が勤めている。
そいつは中学を出てすぐ上京したらしく社長が給料安いからいいんじゃね?って感じで簡単に採用を決めた。
元々住んでるアパートも近いこともあり金城はなにかあると俺の所に来て時間を潰していた。
顔も南国育ちらしくアイドルみたいに整っていた。
そんな彼を俺も結構可愛いがった。金のない時は貸してやり仕事でミスれば俺がクソ上司に謝った。
 
「あのォ、、、、セックスってやっぱ気持ちいいんですかねぇ?、、、ほら、、、僕、、童貞だから早く捨てたいんですよね」
 
ことある事に奴は俺にそう聞く。機会があればそういう風俗にでも連れていってやりたかったが、ただでさえ童顔で店に断られることを思うとそれも出来なかった。
 
実は金城にこの女は二、三度会ったことがある。俺の部屋、彼女が遊びに来ていた時に金城が来た。
 
「へぇー、、こんな子まで使ってんだ、、、、アっくんの会社」 「ま、社長があのザマだからよ、、、、、、人手不足ってやつだろ」
 
女が帰ったあと金城が言った。
 
「いいっすよねぇ、、、、、あんな彼女さん居て、、、、ホント、、羨ましいっス」  「んなことねーよ、、、、、」
 
 
 
作戦そのものは単純だった。
俺の部屋に彼女が居る時、金城を呼び出す。奴にしこたま酒を飲ませる。酔う。服を脱がす。ベッドに繋ぐ。口を塞ぐ。終了。
 
オモチャの手錠が4本。それだけじゃ不安。SM用グッズ。革製の両手首を縛るベルト。3800円もしやがった。
コードなんかを結束するビニール製の結束ベルト。こいつを指に縛ればまずほどけない。そして銀色に光るダクトテープ。
これで口を3重、4重に塞ぐ。コンドーム。俺は言った。ゴムなしでヤれよ。そっちの方リアルだし。
彼女の安全日。それが決行日。ものの数秒でそう決まった。そして買ったばかりのデジタルビデオカメラ。女が言った。
 
「それってさ、、アっくん、、、、、直接撮るの?」  「あたりめーじゃん、、、据え置きじゃつまんねーし」 「恥ずかしいな、、、、、」
 
なに言ってやがる。恥ずかしいシチュエーションほど燃える女。それを俺は知っている。
 
こんな話しをしてる時、彼女が言った。  「なんか、、、あたし、、、また、、、濡れてきちゃったかも」
 
やっぱりバカ女。もうしねーよ。俺はそう思いビールをあおった。

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