※これからもずっと、を読んだあと読むとなんだか繋がる気がします テン
普段、俺は銀行の窓口に行かない。他の人はどうか知らないが俺は滅多に行くことはない。
ATMはよく利用するが窓口、というものにはほとんど用がない。
気になる女がいる。気になる女がそこにいれば俺は行く。そう決めている。
14番、と書かれた紙を機械から抜き取る。俺は座り心地のいいソファーに座った。
しかし、ここに座ってること自体が、なにか金持ちでなければならないような気がして妙に落ち着かない。
およそ俺には縁のないだろう融資ファンドやら手形なんたら、というポスターが壁のあちこちに貼られ尻がかゆくなってくる。
ご相談係、という腕章をつけた初老の男が、小汚い格好で来た俺に立ったまま疑惑の視線を送ってくる。
あんたさ、金持ってんの?金。ここはね、あんたみたいな貧乏人が来るとこじゃないのよ。金、ないんでしょ。どうせ。
着飾った婆さんが入ってくると、その男は急に笑みを作り、手を擦るよう近づいていった。
正面、自動積み立て預金取り扱い窓口、と書かれたブースにその子はいた。
俺はなにくわぬ顔で(週間マネーロンダリング)という、いつもなら絶対手にしないだろう雑誌を見ながらその子を盗み見た。
この銀行の口座を作るときに見せた可愛らしくも、どこか毅然とした表情のその子は俺をチラ見すると素早く下に視線を戻した。
こうして久しぶりに見ると、少し大人びた感じがする。
少女のような顔の作りのなかにも、私はお金を取り扱う特別特殊な業務に携わってる女なのよ、という燐としたものが感じられた。
「ピンポーン、、、、、14番のお客様、、、、、、、、、、、3番窓口までお越しください」
無機質な女性の機械音が俺の耳に届く。
その子は指で、髪を耳の後ろに通すと俺を見据えて言った。
「本日はどのようなご用件で?」 「あ、、、あの、、、、定期作りたいなぁって思いまして、、、、、」
「そしたらこちらの用紙にお名前、生年月日、ご住所、電話番号を記入してください」
そう言いながら女はそばにあるボールペンを差し出した。
無機質な、感情を一切感じさせない女の声。グッときた。
あんたなんか顧客として認めてないのよね、こっちとしては。早くしてくれる?と言われてるようでなんとも忍びない。
俺とわざと目を合わせないようにしているのか、これから書く用紙をずっと見据えている。
やめてくれ。ただでさえ字がへたくそなんだ。緊張した手が震えた。
俺はなにを血迷ったか生年月日のM、S、Hを丸で囲むところをMに○をつけてしまった。俺は明治生まれではない。
女の表情を追ったが、依然涼しい顔でこちらの失敗を見つめている。
「ん、、、、大丈夫ですよ、、こちらで処理しますから」
女が優しくも、今度失敗したら許さないわよ、という冷静沈着な声で言ってくる。「す、、、、、すいません」
その時、女の胸プレートに(篠崎)と書かれているのが目に入った。篠崎、、、この子に合ってる名前に思えるから不思議だった。
緊張しまくる手先。次の失敗は強烈だった。住所欄にいきなり名前を書いてしまった。「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」
篠崎は何を言うでもなく新しい用紙を差し出してきた。何も言わない、という最強の攻撃。冷たい表情。またグッときた。
グッときながらも俺は焦った。汗が額やら脇下やらあご下やら髪の毛の毛根一本一本から噴き出してくるのが分かる。
その汗が用紙の上にポタリと落ち、俺は顔を伝わってくる汗を腕で拭った。
特に暑くもない行内で、俺一人がアホみたいに大汗を掻いているのを気にすると、なぜかさらに汗が噴き出てきた。
さっきのご相談係の初老がこちらを注視している気がし、銀行という場所で、急になにか犯罪を犯してる気分になってきた。
座っている椅子はフワフワとひどく大きく、これからなにか大仕事をすんだぞ、君は。と俺に言ってるようだった。
今度こそうまく書かなければ。俺は震える手で間違えないよう住所を書き出した。
書いた直後、どう考えても枠内に収まりきれないと思った文字は、小学生の作文みたいに枠外に飛び出した。
「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」
篠崎の顔がさらに冷たいものに変わったがなんとかセーフらしい。そうだ、もう少しだ。頑張れ、俺。
あと少し。俺は勢いに乗せるよう名前を力強く書き出した。、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、ビリッ!!
瞬間、さっきの汗で濡れた用紙に大穴が開いた。「あ、、、、、、、、す、、、、すいません」
「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、あの、、お客様、、、、、、、、、、、、、、、なめてます?わたしのこと」
出た。銀行員らしからぬ言葉。やっぱり普通の女。
篠崎はこれ以上ないといった冷たく、睨むような目つきで俺を見た。グッときた。明らかにグッときた。
「と、、、、、とんでも、、、、、、、、、とんでもないです」
「もういいですから、、、わたしが書きますから、、、、それで、、、、、月々いくら積み立てるんですか?」 「い、、、一万ですけど」
篠崎は信じられない、といった目で俺を一瞬だけ見ると、さっさと仕事を終わらせたい、と言うように用紙を処理していく。
「名義はご本人様でよろしいんですよね?」
俺は勇気を出して言った。
「い、、、、、いや、、、、、、、僕の通帳じゃなく、、、、、、、、、、、、、、、君の通帳に、、、、、少なくて恥ずかしいけど」
篠崎の表情。堅い。篠崎の表情。依然堅い。篠崎の表情。絶対堅い。篠崎の表情、、、、、、、、、、、、、、、、、、、笑顔。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、とろけるような笑顔。
そうして、、、、、、、、、、、、、俺達は、、、、、、、、、、、、、、、、付き合うことになった、、、、、、、、、、、、、、、
「アン、アン、アン、アン、アッン!、、、、ほらっ、、もっと恥ずかしい顔みせてよ!、、、稼ぎは少ないくせに、ここは立派ねっ!」
都内。渋谷にほど近い彼女の3LDKのマンションに寄生するように住み着いた俺。
いま、その俺は彼女の寝室で大の字に拘束されている。
銀行では絶対見せることのない欲情で火照った顔。でも制服は銀行でいつも着ているものだった。
薄いブラウスにピンクに染まった彼女の肌が透けている。ブラウス。
貴婦人が着るやつのように腕のところにはいくつもタックが入っている。
細い線の彼女の体。そのブラウスはブカブカと大きく感じられた。その首もと。ボタンが淫らに外されている。
鎖骨と鎖骨が交わる首の付け根のあたり。妙に色っぽく感じる場所。俺はそこをずっと見ていた。
「え、、、あたしの何分の1なのっ?、、、あんたの給料は!、、、ンンっあ、、、、言ってみなさいよ、、、言いなさいったらっ!」
責める言葉を吐き続けるたび、彼女の膣がキュッと締まる気がした。彼女はそう言いながら残ったボタンを外していく。
鮮やかなピンクのブラジャー。白いブラウスからそれが顔を出した。細い線の彼女。でも胸の形はいい。不思議な感覚だった。
「あそこに一日中座ってるとどーゆー気持ちになるか知ってる?、、、なんでもお金で買えるように思えてくるのよっ!、、、、
そんな客ばっかり!ほらっ!、、、これが欲しいんでしょ!、、、、あげるからもっともっと起たせなさいよっ!、、アン!、、、アン!」
篠崎は手に持った数枚の紙幣で俺の顔をなぶった。金に魅入られた女。女に魅入られた俺。どっちでもいい。
「窓口座ったままオナニーしたこともあるのよっ!、、、それだけ欲求不満になるの!あそこに居ると!、、、、、分かるっ!?」
分かるはずがない。それでも何台もの監視カメラや何人もの客がいる中で彼女の手が、あそこをいじってるのは想像できた。
「なにっ!?、、、もう我慢できないのっ?、、預金引き落としですかァ?お客様ァ?、、、あはははっ、、、、、」
そう言いながら手に持った数枚の紙幣を俺の口にくわえさせた。横になったピン札は俺の口で挟まれている。いつものことだった。
彼女は感じながらも、ふてぶてしいほどの笑い顔で、絶対的優位を俺に示すことで満足していく。
俺の半分ほどしかない美しい顔は、色情とねじ曲がったお金の価値観で満たされていた。
「あはっ、、、落としたらあげないからねぇ!、、、、声だすの必死に堪えちゃって、、、、、おもしろーい、、、」
窓口にいる時のように一度、髪を耳の後ろにすくと、小刻みに腰を使いながら冷たい眼差しを俺に送ってくる。
ブラウスのボタン。今は全部外され彼女の白く柔らかそうな腹が見えている。その腰が動くたび強烈な快感が俺を襲った。
「気持ちよくっても声だせないねぇ、、、、、、かわいい顔して悶えちゃってるのォ?、、、すごい鼻息だねぇ、、、、ンア、、、ンア」
新札のほろ苦い味が唇から伝わってくる。口からは息すら出来ない。
「ほら、、ほらぁ、、がんばんないとお金落としちゃうでしょォ?、、、ギシギシさせられたいのォ?またギシギシさせられたいのォ?」
この言葉に俺はいつもグッとくる。無理やりイカせられる服従感。俺は福沢諭吉を数人くわえながら懇願するように首を振った。
誰に教えられたわけでもない。嫌がるのは決まりごと。彼女と俺の決まりごと。
「あは、、、、、、、、、、なんかさ、からだ暑くなってきちゃった、、、、、、、、、、感じてるアンタの顔見てたらさ」
ブラウス。彼女は肩から腕にかけ、はだけさせる。半分脱いだ状態。ピンクのブラとのコントラスト。膣が一回キュッと締まる。
どうせなら全部脱いでくれ。それが線の細い彼女の肉体を余計に浮き上がらせていた。男にとっては致命的。
「あれぇ、、いやなのォ、、、でもあたしギシギシしたいんだもォん、、、、ね、、いいでしょォ、、、、?」
こうしてる時の彼女の膣。生き物みたいに蠢いている。甘い蜜がしたたっている。
彼女の悪魔的な笑み。甘えるような口調。俺に問う意味はほとんどない。いつもこれでイかせられる。いつものこと。
「泣いちゃってるのォ、、、泣いてまで許してほしいのォ、、、、、、アン、、、もっと情けない顔みせてよォ、、、、ねぇ」
彼女の言葉通り、セミダブルの高級ベッドは品のいい音をゆっくり出し始めた。口には札束。まぬけな男。人間ATM。
俺の目。女の子からレイプされる恥ずかしさと気持ちよさで涙が溜まっている。
「なぁに?、、、、ギシギシいやなのォ?、、、、そんな気持ちいいお顔してるのにィ、、、、いやなのォ?」
俺はいやだ、というように首を左右に振り、身動きできない四岐をばたつかせた。どうせ俺は。
何を言ってもギシギシさせられる。彼女の肉体でギシギシさせられる。そして射精させられる。分かっている。俺と彼女の決まりごと。
「ほらァ、、、、ギシギシしてきちゃったねぇ、、、、どうするぅ?、、、犯されちゃうんだよォ、、あたしからァ、、銀行の受付嬢からァ」
小型のトランポリンに寝ているように弾んでいく俺の体。彼女の小振りだが形の整った綺麗な胸も一緒に揺れていく。
「縛られちゃって動けないねぇ、、逃げられないねぇ、、、もっともっとギシギシさせてあげるからねぇ、、、、ン、、、、ン、、、、ン」
ねぇ、という語尾がもの凄く色っぽい。彼女が欲情している証。
俺は頭を反らせながらも、紙幣をくわえながらふんばる。それが彼女の楽しみ。それが俺の楽しみ。
「ン、、、ン、、、ン、、、、ン、、、、ン、、、、、、ほらほらァ、、、、唇震えてきちゃったねぇ、、、、、落ちちゃうよ、、おかね」
彼女は四つん這いになると、俺の口に挟まれた札束を指先で嬉しそうにいじる。その体勢で激しく腰を使った。
「限界だねぇ、、、、、そんな、のけ反ちゃってぇ、、、、、、、、イきたいんだよねぇ、、、、、こうされたかったんだよねぇ、、、」
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、ぷっ、、、、、、、、、、、、、ぷっぅ!、、、、、、、、、、、、
俺の口から数人の福沢諭吉が飛ぶ。ヒラヒラと宙に舞う万札。壊れそうなほど軋むベッド。そして。
射精、、、、、、、、、、、、、、、、、射精、、、、、、、、、、、、、、、、、射精。
なおも激しいスプリングの音が部屋に響いている。のけ反る体。飛び散る紙幣。篠崎の顔。銀行員の顔。
俺達はこれからもこうして付き合っていくだろう。間違いなくずっと。
おわり
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