マー娘  (1) 

                                            作:テンちゃん  

男は走っていた。この先の角を曲がればなんとかなるはず。息が苦しい。しかし今は走るしかない。あと少し・・・。
あと少しでこのゲームに勝てる。胸が苦しい。体中が悲鳴をあげている。走りながら後ろを向く。誰もいない。誰も追ってきてない。
タイムリミットまであと少し。3日間着ていた服もボロボロだ。でも、あと少しで楽になれる。
喫茶店の看板が見えてくる。あの看板を曲がった向こう。賞金が待っている。だから今は走るしかない。
路地裏のゴミバケツにつんのめる。派手な音をたててすっ転ぶ。見つかったか。捕まった時の恐怖が頭をよぎる。見つかったのか。
慌てて後ろを向く。大丈夫だ。誰も追ってきてない。男はすぐに立ち、また走りだす。
足に刺すような痛みが走る。だが、そんなことにはかまってられない。よし、もう大丈夫だ。あと10メートルほどで・・・・。
 
「ハァーイ、今夜も始まりました!マー娘の(追って見つけてネブリンチョ!)えー、今回でねぇ、第三回を数えるわけですが、今夜もこの大都会を舞台に、すでに熱戦が繰り広げられています!えー、ではさっそくですがヘリの方と中継が繋がってます。」
 
「はいはいー!こちらヘリです!見えるでしょうか?彼の姿が。んー、だいぶ焦ってるようですけどねー!果たしてこのまま逃げ切れるんでありましょうか!!いやー、いいですねぇ!今までの男とは走りが違いますよぉ!走りがぁ!充分期待していいと思います!・・・アっ、と、後方から二人、いや三人、ハンターが追ってきてます!、、、、っと、この中には足の速いミーキもいるぞぉ!そしてカグッチもいるようです!!ピーンチ!!、、、、彼は気付いてるんでしょうか!!あーっと!いま気付いたようです!
危ない!危ないぞぉ!!・・・・・・・・・・・・・・・いやぁ、なんとか逃げ切ったようです!!今夜も目が離せませんっ!」
 
「なるほどねぇ!いい感じになってきた、ということでしょうか!え?なに?CMいっちゃうのぉ?なんだ、なんだ、いいとこなのにねぇ!
では、CMを挟んで続きをお楽しみくださぁい!さ、じゃぁ、、、みんなでぇ、、、せぇーの、ネ・ブ・リ・ン・チョォ!!」
 
男は焦っていた。ゴールがあるはずの立札がない。あるはずのものがない。どうする。どうしたらいいんだ。道を間違えたか。
突然後ろから足音が聞こえてきた。追ってきてる!逃げなくては!足が勝手に動いた。ここで捕まるわけにはいかない。
スタート時に飲まされた薬が効き出していた。朦朧とした意識で走り続けた。走ってる最中も眠気が襲ってくる。
 
捕まったらもっとヒドイ薬。筋弛緩剤みたいなのを飲まされるらしい。それだけは勘弁だ。だから逃げなくてはならない。
闇雲に走った。足に激痛がはしる。どこをどう走ったのか覚えてない。だいたい俺は今どこにいるんだ?あと何時間でタイムアップなんだ?考えてる暇などない。とにかく逃げなくては。
 
それは始めなにかの棒に見えた。突然伸びてきた白い棒。スネを強打し、転倒した時はじめて女の脚、とわかった。
 
「ハァーィ、、ざんねーん!!、、、、惜しいねぇ、あと少しだったのにィ!!、、、、、あははっ!」
 
しまった。男は思った。マー娘の中では体格がいいヤッスィ。一番注意しなくてはならない存在だった。
そのハーフのような顔からは笑顔がこぼれている。中性的な美しい顔立ち。その額には応援団のような長い鉢巻。メンバー全員が着けてるはずの長い鉢巻が垂れている。
 
薬が効いてヤッスィが二重に見える。まずい!捕まってしまう!立ってみるが足がいうことを効かない。
 
「ち、、、ちょ、、、、ちょっと、、待ってくれ!!、、、、ま、、、待ってくれぇ!!!」
 
ピンで売れたかに思えた。くっ、、いつの間にメンバーに、、、、、その、ミーキが逆の路地から姿を現す。そしてロリコン好きにはたまらないヤゴとスジ。この二人にも細心の注意を払ってきたはずだった。若いだけに体力はある。
 
ツンツクのプロデュースにもいささか飽きが生じてきた矢先。また、、、、また、、入れちまうのか、、、、、。
先輩の動向に片時も目を離さない、その洞察力。最近入ったメンバーだろう、、、3〜4人。
考えたが思い出せない。いや、覚える気がなかったのか。顔はなんとなく分かるが名前までは出てこなかった。そして、、、、、、、、
 
奥に一人。あいつか?あいつなのか?ぼやける視界。まどろう意識。その意識のなか男は思った。
 
この子は将来必ず綺麗になる。デビューしたての頃、そう思った。ナッツ、コマキが退き、歌うときの立ち位置が微妙に変化してくる。
そして、きた。やはり。
思ったとおり彼女。
その天然キャラも人気を独り占めにしている。そう、今、マー娘人気ナンバー1のムスメ。
石革リッカ。こしたんたんとそのポジションを狙っていた女。12人という中から這い上がるのは容易ではなかったハズ。
しかし、いま、こうして自分を見下ろしている容姿。可愛いさに美しさも加味され一段と女性らしくなった。
 
そのスジには大変な人気があるカグッチが割って入る。強気のカグッチ。それが、また、いいんだろうか。
 
「ハァ、、、ハァ、、、も〜うっ!逃げんなよなっ!、、、、あ〜、、、疲れたしィ、、、、、あれ?リーダーは?」
 
常にリーダーを気使う、実質上の2番手。ナリは小さいが胸に秘めたハートはメンバー1熱い。その大きい瞳が男を見て輝く。
男は立った。すぐに酩酊にも似ためまいが襲う。もはや自力で歩くことは不可能だった。そして、また、膝から崩れ落ちた。
 
「ああ〜っとぉ!!、、、こちらヘリですが、、、今ですねぇ!マー娘に着けたGPSに動きがあったようです!!え〜、、、あっ!
確保っ!!、、、いま確認ができましたァ!!確保とのことです!!、、、、いやぁ〜、、、ざんね〜んっ!!!終了ぉぉっ!!
捕まってしまった男性には、これからネブリンチョタイムが待っています!、、、、上空からの映像では、、、やはりビルの中に入っていくようですねぇ!!、、さあさあ、日頃溜まったアイドルのウップン、晴らしちゃってくださぁ〜い!!、、、、ネブリンチョ、スタートぉ!」
 
「なになに、、こちらスタジオですが、、、、捕まったぁ!?、、、あれれ、、残念だなぁ、、、いやいやぁ、、これからの映像をテレビでお伝えできないのが、、、ほんとに残念って意味ですよぉ!、、、あんな若い彼女達12人もぉ、、、、大変だぞぉ!彼はぁ!!
特にアレが好きなのが何人か居ますからねぇ、、、、いや〜、こりゃ、体がもたないなぁ、、、ガハハハっ!
いやぁ、、、、マーガリン娘に捕まってしまいましたかぁ!、、、、、、、、、、、、ざーんねーん!!、、、」
 
機内コンソール。点在していた光がひとつの方向に集結していく。こりゃダメだ、、、、。中継ヘリの操縦士は、そう、思った。
 
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