「わたし、、本当になにも覚えていないんです」 「でも、どうか気分を害さないで聞いて頂きたい。」
存在は確認しているが実体の掴めない2つの影?・・・・・
記憶 葛藤 思考 回避 虐待 憎悪 嫉妬 混迷 憤慨 執着 悪寒 性交 堕落 遺恨 執念 虚栄 失踪
「たしか、、、お歳は6歳っていったよね?」 「あたし、、、ダルいのヤなんだよね、、、」 (本文より抜粋)
《あなたの闇は私の闇でもある。だが、それを共有することは不可能だ》・・・・・・・・ヌエボ E ザーウィン 第7章
(1)
鑑定を始めてから3ヶ月。幸介は医務室に差し込むさんさんとした春の日差しを浴びながら前日に終えた知能検査や作業検査、事務局から送られてきたMRI、CTのデジタルな画像がイメージする情報を子細に眺めた。
面接での藤堂結花は年頃の女の子らしく、かと言って粗暴な所見もなく、どちらかといえば丁寧で礼節をわきまえ、ときにはこちらも微笑ましくなるほどの笑顔も見せた。
言語性知能、動作性知能いずれの成績も標準値で反応内容を見るかぎり、人格の歪みも精神障害の特徴もまったく見受けられなかった。
【女性3人、少年を集団暴行】
新聞の片隅に簡潔に事件に至るまでのあらましが書き連ねてあったが(暴行)をことさら強調し、その中にあったとされる核心には触れられていなかった。
被害者が未成年ということもあり内容の詳細を一般の新聞に載せることはタブー視とされたのか、メディアによる報道規制も敷かれたらしく、一部、面白ろおかしく発行される週刊誌のネタとしてしか取り上げられず、その【軽ワゴン車】でされた行いは実質、公表されてはいない。
結花の素行を見る限り、半年前に起きたとされる事件がまるでねつ造されたかのように思えるほどだったが、こと、その話しに話題が及ぶと、彼女は汚いものを見るような目つきで幸介を見つめ、小さな口を真一文字に結び、かたくなに口を閉ざした。
幸介はディスクにある事件当初のファイルを改めて見直してみた。
○×精神医療クリニック 院長
《所見1》
患者は亜混迷状態のまま女性警察官2名により搬送されてきた。おびえた様子と攻撃的な態度が入り交じり錯乱状態下にある。
質問に対する返答なし。ここには他にも患者がいるため婦長が自分の口に指を当てシィー、と黙らせようとするが、疎通性欠如。
投薬を試みたが患者の拒薬により不可能なため、静脈注射に切り替える。
処方 LPS35ミリグラム ジアゼパル15ミリグラム サルトーゼミン5ミリグラム
LPS・・・レポメプロメジンは抗精神病薬で鎮静効果にすぐれている。強力なハロベリドールを使わずに、まずLPSを選び、さらに35ミリいう少量に抑えたのを見ると、この精神科医は私とほぼ同じ考え方のようだ。と、幸介は思った。
医師として適切な判断だったと言えるだろう。
一般にはあまり知られていないが「鎮静剤」と言っても「副作用」がひどく、感情や思考、そのものを司る電気信号がブロックされることにより、患者は1日中呆けたような状態になる。幸介自身何度も見てきたが、ソレはまるでアルツハイマーの老人のようだった。
当然、人の心そのものを直す薬などこの世の存在しない。だから最終的に分析医、カウンセラーである幸介のような所に患者はまわされてくることになる。
《所見2》
一度収まりかけていた患者の発作だったが、3時間後、両親が迎えに来たのをきっかけに再び悪化する。
原因は家庭内によるストレス飽和と見受けられる。両親に事情を聞くが特筆すべき内容なし。
児童虐待の疑いあり。しかし身体的外傷は見受けられない。また、患者が22歳の女性のため児童にあたるのか問われる。
当院ではこれ以上検査する設備もないためそのまま貴院に移送望まれたし。
警察、及び児童相談所への報告は貴院で決定されたし。尚、容態が安定した患者に個別に事情を聞いてみたが両親による虐待歴はないとのことだった。移送時も両親が付き添ったが当院で見る限り、特におびえてる様子は見受けられない。
貴院で再度、検査を望まれる。、、、、以上
やはり出来た医師だ、と幸介は思った。このように、搬送された先の病院で患者の命運が左右される場合もある。
特に、児童虐待のような案件の場合、家庭に土足で踏み入ることにもなりかねないので、精神科医はことのほか気を使う。
氷山の一角、、、、、、、、その言葉がうまく当てはまるほど表に出てこないのが虐待の実情であり、幸介がこの仕事をして感じてきたいきどおりの1つだった。
しかし、、、、、外傷がないとなると決定的要素が乏しいため迂闊に警察などには報告できない。
栄養不良なども見受けられず、一番問題なのは結花自身、虐待歴を認めていないことだ。両親に対する恐怖感からくる隠ぺいでもない。と、すると幼少期における虐待が可能性としてはある、、、、、過度のストレスによる記憶欠如、、、、、
このようなデリケートな問題はいつも幸介を悩ませた。
両親にも先日会って面談をしたが、例のごとく好印象だけを残し去っていった。大人は特に「二面性」の作りがうまく、加害者である親が自白することは滅多にない。
だが、我々【最終ライン】が誤った判断を下すとその子にとって辛い一生が待っていることになる。
「先生、、、、今日の結花さんのです、、、、、こちらに置いていきます、、、、」
ベテランの看護婦がディスクの隅に透明なファイルケースを置いていく。
毎日かかさず行われる文章書き取りテスト、SCTの内容も見なくてもおおかた想像できた。
やはり特におかしいと思われる所はない。このような事件の場合、例えば「父」や「母」、または「弟」を使って短い文章をつくらせたり「わたしの父は・・・・・」であるとか「わたしは幼い頃・・・・」などに続けて書かせると【言葉】と違い明確な心の部分が見えてくることがある。
書けなければ書けないでソコには事件に繋がるヒントがあるし、意識した文章作りだとソコにも一定の歪みができる。
だが、決まった時間にディスクに置かれる文章からは、藤堂結花、という22歳の女性が「家族」というものに対する感情表現を特に抑圧してるようには思えなかった、、、、、、、、、、、
(2)
今日、この面談室で彼女と会うのは4回目だった。ブルーがかった患者専用のガウンのせいかホホが多少やつれたように見えたが化粧っ気のない素朴な少女の瞳がドアを開けた幸介に向けられた。
「やぁ、、、おはよう、、昨日はよく寝むれたかい?、、、今日も簡単なお話しをするからよろしく頼むよ、、」
前の時間、担当である8歳の男の子の意識がどこかにあったのだろう。
幸介は「検査」と言わずに思わず「お話し」と言ってしまい「しまった」と思ったが彼女は気にしてないようだ。
「、、、、おはようございます、、、、、よろしくお願いします、、、」
窓から差し込む夕日のせいで結花の髪が茜色に染まる。
「さてと、、もぅイヤな駆け引きはナシだ、、、医者ではなく、、僕個人として君とお話ししたい、だから今日は録音テープも、、ほら、、
非常ボタンもOFFにしてある、、」
「私、、、わたし本当になにも覚えてないんです、、、、、すいません、、、本当なんです、、、、」
「いやいや、、、、君があやまる必要はないよ、、、、謝る必要なんかない」
「あの、、先生、、、わたし、、、あの、わたし、、、、、、私が私じゃないみたいで怖いんです、、、気付いたら時間が抜けたようになってて、、、、この前も、、買い物に行く気もないのに両手一杯、、、ブランド物ばっかり買ってたりして、、、、あと、、買った記憶もないような、、、、、派手な服とかもあったりして、、、こわい、、、、怖いんです」
(3)
【結花】という名前が実名ではない、と知ったのはそれより1週間ほど前だった。
幸介はまず【境界性人格障害】を疑った。しかし、パーソナリティ・テスト、YG性格検査、ロールシャッハ・テスト、毎日行われるSCT、これらの検査を重ねるうち、日本では、いや、精神医学界でも懐疑的に見られている【解離性同一性障害】、つまり多重人格の疑いがあるのではないか、という結論に達した。
サイコホラーや小説、映画などでもてはやされる【多重人格】は、実のところ信憑性に乏しく、世界的に見ても立証に至る根拠がほとんど解明されていない。
「う〜んとねぇ、、、、ペンギンさんにみえるかな、、、ミュウね、、ペンギンさんだいすきなんだよ、、ユカねえさん、、あんまりミュウのこと、、おそとにだしてくれないの、、、ほんとだよ、、、だからね、、ミュウ、、いっつもひとりぽっちなの、、、、」
ちょうど3日前、幸介自身あまり期待してなかった検査。
ロールシャッハ・テスト、、、、数種類のインクの染みが何に見えるかを答えさせてる途中、突然、無邪気な幼女が絵本を見てるような、心から楽しむような表情で彼女が【発現】した。「この子」に会うのは今日で2回目だ。
「、、そう、、ミュウちゃん、、、たしかお歳は6歳って言ったよね、、?」
「うん、、そうだよ、、ろくさいだよ、、、なんで?、、、いいからもっとあそぼー、おじさん、、あそぼぉよ、、、、、、、ん〜とねぇ、、ミュウおえかきしたいなぁ、、、ね、、ミュウとおえかきしよーよ、、ミュウってウサギさん、かくのうまいんだよ」
実年齢より16歳も離れてる舌ったらずな言葉使いは幼女のままだ。声質も幼くしている為か、かすれた高いものになっている。
「うん、、そうだね、、でもね、ミュウちゃん、、、おじさん、ちょっとユカねえさんとお話ししたいなぁ、、呼んでもらえるかな、、、」
「やだ、やだよぉ、、もっとあそぼーよ、、う〜ん、、あとでミュウとあそんでくれるっておヤクソクしてくれる?、ほんとにほんとだよ、、
あ、それとユカねえさんにミュウがでてきたこといっちゃダメだよ、、それとあのコワ〜イおんなのひとにも、、、またおこられちゃうから、、、たたかれちゃうから、、、」
虐待、、、、自分の母親のことを指しているのだろうか。しょんぼりした顔から子供のような小さなあくびが出た。しかし、今の時点では断定できず、突っ込むべきではない。
「叩かれる?、、ユカねえさんは、そんなことしないよね?、、うん、、わかったよ、、ミュウちゃんが出てきたことは言わないって約束するよ、、またあとで遊ぼうね、、、、、、、、、、、、はぃ、、ゆびきりげ〜んまぁん、、」
小指と小指を絡めながら約束してる内に、彼女は小さく首をうなだれて薄く目を閉じた。
「、、、、、、、結花さん?、、、、結花さんだね?」
「違います、、、すいません。、、、里美です。結花は今 ねむっています。」
ハキハキとした口調と視線は意志の強さを現している。
「いや、、、そう、、、こちらとしては里美さんでも構わない、、、そう思っていたんだ」
「それで、どう思われました?、、エリカのことは何か分かりました?、、ミュウもあの子の存在を知ってると思ったんですが」
特にこの「里美」という【人格】はこちらの意図することを的確に捉え「機嫌とり」も一切通じなかった。性格も非常にかたくなで、今のような信頼関係を築くのに苦労させられた。しかし、その分【人格統合】には彼女のような【リーダー格】の人格がどうしても必要になってくる。その目は幸介の心の変化を探るように視線をはずそうとせず、彼女だけには今まで真実を述べてきた。
北米ではそうゆう人格を内部にいる自己助力者、、、、、、IHS(インターナル・セルフ・ヘルパー)と呼ぶ。
「いや、エリカさんのことはまだ、、、1度だけ出てきたけど僕が質問したらすぐにミュウちゃんに変えられてしまって、、」
6歳の幼女とはいえ決して呼び捨てにしてはならない。それを「彼女達」はことのほか嫌うというデータがある。
「そう、、そうでしたか、、私からも話しをしてるんですが、エリカ、なかなか出て来ようとしないんです。特に昼は。」
不意に、一人の女性を相手に複数の人間と話してる錯覚に襲われる。人格によりこちらの対応、意識の切り替えもしなければならず、幸介にも過度の負担がかかる。
分析医といっても一人の人間だ。幸介には「転写移行」を回避するため、週に2度、臨床心理士がカウンセリングをおこなっている。
今までの結花に対する診療で分かったのは計8人。実生活では主人格である結花と、結花の欠点を補うために出てくる自称26歳の里美が入れ替わり立ち替わり現れていたのだが、弟の死をきっかけに、ミュウという6歳の女の子、年齢と名前が分からない(これはミュウの保護者のようなものでミュウが悪さをしないため発現されたらしい)女性。
そして夜な夜な男あさりをする淫乱なエリカという19歳の女の子。そして存在は確認してるものの、里美ですら【実体が掴めずにいる2人ぐらいの影】
さらに苦しさや辛さ、痛みなどを一手に引き受けてるらしい、シオリという(この女性は部屋の隅にうずくまるように座り出てきたがらない、と里美から聞いた)人格もあるようだった。
「ところで、、、シオリさんのことを、どう思ってるの?、、里美さんは?」
「前にも話しましたが、何度も私の前にいる人は安心できる人よ、イジメられないわ、だからシオリも一度出てきたら?、と問いかけましたが、、、、出てきてくれません。」
「いや、、私が聞きたいのは、どう思っているのか?、ということだけど、、、」
「あ、、すいません。、、可愛そうだとは思いますが、こちらの意見を聞いてもらえないと分かったいま、正直、放っておいてます」
やはり結花の答えとは「ズレ」がある。この【里美】は知的で統率力はあるが他者に対する思いやり、優しさが欠落してるように思われる。
『ほんと、、、ホントにかわいそうで、、、私が奥にいるあいだはなるべく彼女の側にいるようにしてるんです、、、あの子、、、、傷つきすぎて、、、、、本当にかわいそうなんです、、、、先生、、なんとかならないでしょうか?』
先日、涙まじりに言った結花が頭に浮かんだ。
いずれにせよ、結花と里美が入れ替わってるだけだったら実生活にさほど支障はなかったが、ミュウが2人の目を盗んで現れたのをきっかけに、高校に入る頃になると「エリカ」が頻繁に顔を出すようになった。歳の離れたおじさんとも付き合ったらしい、と里美は付け加えてきた。
やはり【エリカ】という人格が半年前の事件の【キーワード】になりそうだ、と幸介は思った。
「それで、、、私としては今後【みんな】にどのように接していけばいいのでしょうか?、、だいたいの居場所や性格は把握してるのですが、、、、これ以上先生にお教えすることもありませんし、、いや、あの、、、、もちろん協力はしていくつもりです」
「うん、そうだね、、今まで通り普通に接してもらえればそれでいいよ、、、でも、、里美さんだけ負担に感じるのは良くない、、、これは【みんな】の問題だ、、大変だろうけど私を信じて一緒にがんばろう、、、、」
真剣な顔でお互い言葉につまる。里美にも不安の色が見え、幸介は今後の治療指針に考えを巡らせた。
「あ、、ちょっと待ってください、、、いつも私達を上から見てる人、、、その人が出てきてもいいと言っています、、、、、、いま出たいと言ってます、、、どうしますか?」
無論、幸介は承諾した。今度の入れ替わりは先ほどより速い。エリカだろうか。2秒ほどまぶたを閉じると、急に彼女の顔つきが締まったように中性的になる。
やはり違う、、、、、エリカではない、、、、、、
「、、、、、、、、、はじめまして、、ミノルといいます。稔です。普段、全体を高い所から監視しているのですが今回はこのような事件を起こしてしまい申し訳ないと思ってます。しかし、今謝っているのは結花という、1人の人間として謝っているのです。断じて【僕】としてではない。そこは誤解なさらないで頂きたい。以前から先生と里美、結花の会話は聞いておりました。」
初めて会う人格、、、、以前から居たのだろうか、、、、それとも突発的に発現したのだろうか。
確かに解離性同一性障害では【異性】の報告例もあったはずだ。だが、初めて多重人格患者を扱う幸介には、この中性的な声で話す彼女が驚きの対象物に見え、ほんの一瞬たじろいだ。
幸介はなにか言いかけたが、彼女は手の平を前面に差し出したまま、それを拒むように頭を左右に振るジェスチャーをした。
長く結わえられた彼女の髪もフサフサと揺れる。
「僕に質問しないで下さい。質問されるのは嫌いです。もし、僕になにか質問したらすぐに消えます。だから僕に質問しないで下さい。正直、先生は驚いておられる。当然でしょう。女の子の体から僕のような得体の知れないものが出てきて。少し気味悪がってるのが分かります。いいんです。無理しないで下さい。しかし、いま言った質問しないで下さい、というのは、それとは関係ありません。わかります?僕の言ってること。気分が悪いから質問するな、と言ってるのではないということです。」
「、、、わかりました、、、どうぞ、、続けて、、、、」
患者の言いなりになるのはあまり良くはない。インターンの頃から叩きこまれてきたが今はどうしようもなかった。
自傷行為、自殺未遂で担当医がオロオロした態度を見せると精神病患者は際限なくつけあがる。自分に気を引かせるために。
だが、彼の【存在意義】を確認するまではどうしようもなかった。
「まず、これは先生や里美達が解決したいと思ってることとは無関係なんですが、、、いや、やはり関係あるかもしれません。さきほど先生はミュウと『また遊ぶ』と簡単に約束しましたが、僕にはああゆう約束は依存感情をあおるだけであって、ミュウの発現率を高めてしまう要因になり得ると思うんです。これは僕からのお願いなんですが今後、ああゆう安易な約束はやめて頂きたい。先生はミュウのことを一人の幼女のように接していますが、それは危険です。はっきり言って間違いです。僕も含め、結花、【本来の人格の断片】です。当然、里美やシオリも入ります。エリカも。それで【一つの人格】なんです。僕も里美も他の者もそのことは【理解】しています。ただ、ミュウだけは6歳のまま、そのままの精神年齢なので、一人の【自我】として存在しているフシがあります。分析医の先生ですから僕の言ってることの意味、分かりますよね?、、、、、、、、、、
先生は今、、僕のことを一瞬嫌われました。おそらく医師としてのプライドからか、そうゆう心の変化がありました。その気持ちは分かります。でも、どうか気分を害さないで聞いて頂きたい。人格統合というものを目指すおつもりなら。」
里美ではない、、、、、、彼だ、、、、彼が【内部助力者】だ、、、、、、間違いない、、、、、、、
まるで第三者のように患者自身の治療方針を述べるIHS独特の話し方。それを聞きながら幸介は確信に近いものを感じた。
「ああ、、、君、、いや、、稔くんの言うとおりだ、、、僕は少し苛立ったかもしれん、、、」
「そうです。君、あるいはあなた、と言う呼びかけはまずい。今後、他の者にもできるだけ名前で呼んで【本人】かどうか癖や言動で確認して下さい。【なりすまし】に注意して下さい。前にもいましたが里美になりすまして出てきた者がいます。先生は気付かれなかったようですが。、、、その時里美は眠っていたので里美自身【なりすまされたこと】に気付いてません。基本的に里美以外は【統合】に反対しています。僕も監視してるのですが先生のような人が相手だと、たまに悪さをする奴が出てきます。」
そう言えば里美の話しに矛盾を感じたことがあった、、、、、、、、里美のなりすまし、、、、、、、、、
【彼女】の口は、腹話術人形のように動き、そのためか「息つぎ」もどこかぎこちない。無理に低音を出そうとしてるのか、白く細い首が苦しそうにぜん動している。
自分を見つめる虚空のような彼女の瞳から目が離せない。自分自身、理解がまだ追いついてない。
今日は中断した方がいい、、、、、、、突然現れた【彼】の操作話術に飲まれそうだ、、、、、、、だが、彼が本当の内部助力者なのだろうか。その一点。
幸介は彼の気分を損なわないように気をつけながら、しかし、適度な【駆け引き】をするつもりで、出来るだけ平静を装いゆっくり言った。なんとしてもそれだけは確かめたかった。
「、、、、、でも、稔くんの話しを聞いてると、稔くん自身【本人】かどうか分からないよね?、、、それはどう説明す」
「僕に質問するなと言ったはずだ!、、、なぜ簡単な約束を守れない!、、、、、だから【表】は嫌いなんだ!!」
無表情のまま口調だけ語気が荒く、白く繊細な肌がみるみる紅潮していく。
「す、、すまん!僕が悪かった、、、、人格統合には君、、、いや、稔くんが必要だ、、、、悪かった、、許してくれ」
しばらく激しく息をつくと、さほど間を置かず以前の状態に戻った。
これも内部助力者の特徴、、、里美とは明らかに違う。里美は感情をあまり表に出さない。自分の質問の意味など重要ではない。
彼の反応。、、、、、、、いい【診断】の目安になった。
やはり、ほぼ100%彼が【IHS】だ。今日はこれが分かっただけでも充分だ、と幸介は思った。
「僕はもともと、つまり彼女が生まれたと同時にずっと中にいました。すなわち誰でも、、先生でも、、あ、僕の言うことは信じてもらえないかもしれないですが、、先生にも女性の人格があります。ただ表に出てきてないだけです。」
「いや、そのことはもういいんだ、、、質問した僕が悪かった、、、、ただ、稔くんには統合を手伝ってもらいたい、、、」
「むろん、そのつもりで出てきましたから。【彼女】を表に出してはいけない。あいつだけは、、、、、危険すぎる。」
【エリカ】とは一度、ほんの1分ほど話したに過ぎなかったが、男を誘うまなざし、女の肉体を最大限に活かした身のこなし、口調、そのどれを取っても結花とは思えないほどで、幸介自身、あの短い時間で誘惑されそうだった。
「せんせーの話しさぁ、、、ダルい、、あたしダルいのヤなんだよね、、なに?このダっさい服、、、、、、結花のやつこんなの持ってたっけ?、、、こんなの着て街出れないよー、、それよかさぁ、、あたしとイイことしない?、、せんせーもケッコーいい顔してんじゃん、、、なに?ことわっちゃうワケ?、、、、ならもういい」
と、すぐにミュウに変わられてしまったが。
もう一度、、、もう一度、、、、、彼女と話さなければ、、、、、、、、、
てんちゃんの目次