ペニスの女王様  (1) 

                                            作:テンちゃん  

                   :本作品は全て作者の妄想でありフィクションです:
 
 
  
「ヤァッ!、、、、、、、、、、、ヤァッ!!、、、、、、、、、、ハァァァん!!」
 
大勢の観客がいるとは思えないほど静まりかえったテニスコートで、彼女のかけ声とボールの弾く音だけが響く。
 
「40−0、、、、、、、、、、ゲームセット!!、、、、、win!、、、、ポロソフィーナ!!」
 
若干18歳。
プロテニスプレーヤーのかたわらモデルもこなすそのギタイは、照りつける青空のもと、赤茶けたコートにひときわ映えていた。
事実、ここにいる大多数の者はテニスの試合そのものより、彼女の生の姿を一目見ようと、通常ならばあり得ない大金を、もしくは公にできないルートで流れてきたチケットを握り締め、今日という日を心待ちにしてきた。
 
彼女が最後に放ったキレのあるスマッシュは、低い弾道を描きサイドラインぎりぎりをかすめるように捕らえていた。
副審がわずかに体をずらすと、スピードが衰えない球が勢いよく深緑色の壁にバウンドする。
 
見る者によってはアウトと取れる球の流れも大画面にスローでリプレイが映しだされるや、一瞬の静寂を置き、場内全体が大歓声に変わっていく。
 
我が娘を見るような主審とゆっくり握手をすると、コート越し、ライバルとなった敵選手と一度、強い抱擁をかわす。
敬うように優しい笑顔の彼女に向け、さきほどより一段とエキサイトした拍手が巻き起こった。
 
こうしてる間にも全方向から捉えられた自分の映像は、衛星を通じ世界中に配信されてるに違いない。
そう思えばこそ、ハードスケジュールに詰め込んだ日程で固くなった笑顔もいくぶん柔らいだ。
 
いつもの儀式。深めに被ったサンバイザーを外すと、彫りの深い、しかし、どこかあどけなさの残る愛らしい笑顔でここに集まった観客に惜しみない投げキッスをしてやる。
まるで終わりのない大歓声と拍手の洪水に続き、選手ゲートに通じるマスコミ陣から瞬くようなフラッシュが光った。
 
フッ、、、、、勝って当然よ、、、、、、私を誰だと思ってるの?、、、、、あなた達みたいな虫ケラとは違うのよ、、、、、フフ、、、、
 
そんな想いは微塵も出すことなく、少女のような仕草でベンチに座る。
コーチと二言、三言、談笑しながら完璧なまでのプロポーションを誇示するように長い脚を一度大きく伸ばすとスポンサーマークの入ったジャージをつま先に通していった。
 
試合が終了したにも関わらず、ここに残った大半の人の目は、彼女の行動を片時も離さず追っていた。
 
そうよ、、、、もっと見つめて、、、、、、、、私を見るの、、、、、、、、、次はいつ来るか分からないのよ、、、、、フフ、、、、
 
5000人を超える目が自分を見つめてると思うと、毎試合、エクスタシーにも似た快感が体の根底に栗立ってくるのがわかる。
 
さぁ、、、もっと見て、、、、、そして今夜のオカズにしなさいな、、、、、、、、決して触れないけどね、、、、、、フフフッ、、、、
 
そう思うと更に肉体の中心が疼いたように熱くなり、即座に今夜、ホテルで待つ2匹のぺットのことが頭に浮かんだ。
白いテニスウェアーの内部に、汗と混じりジクジクとした愛液が染みだしてくる。そう意識すると、もはや自分の意思とは関係なく乳首が堅く張りつめていく。
ミニのスカートが風にはためく度、場内からは溜息にも似たどよめきが起きた。
 
スポーツの疲れを癒すのはアレをやるのが一番なのよね、、、、、
 
誰一人気付かない自分の下半身に起こった現象を、隠すかのように彼女はゆっくりと脚を組み変えた、、、、、、、、。
 
 
彼女の生まれた地域は決して裕福とはいえなかった。いや、国全体が貧窮していたと言えるだろう。
モスクワ郊外に居を構えて以来、父の所属するロシア陸軍の演習場、広大な雪原には今や使用されることのなくなった旧式の戦車が文字通り放置されていた。
旧ソ連邦崩壊後、冷戦構造が終わりを告げ、たちまちのうちに財政が貧迫した軍は持てる軍備を西側諸国の軍事フリークに開放し、わずかながらの金を稼ぐことに余念がない。
明日食べるパンさえこと欠く日もあったが、それでも両親に愛され、温かい家庭の中で育った彼女はときおり思いついたように父が買ってきてくれる甘いチョコレートの味を今でも覚えている。
 
交通規制された道路、前後左右、警護の車両が挟むリムジンの後部席で、彼女の目蓋に十数年前の思い出が蘇る。
試合で見せた覇気と闘志はナリを潜め、幼いころ、毎晩のように両親に可愛いがられた少女の顔が重なっていった。
マンホールチルドレン。幼いころ遊ぶ友達にも数人は必ずいた。青い目をした人形のようなその瞳で見てきた彼女にとって、それは当たり前のように現実としてあった。いや、今でもその痕跡は累々として残り、むしろ多くなったような気もする。
今日遊んだ子が明日いるとは限らない。人身売買は車を売るように行われ、わずかばかりのお金を貰いそれを認める親さえいた。
ハシシという名の粗末な麻薬は5歳にも満たない子供にも蔓延し、過ぎ行く人々にうすら笑いで小銭をせびる。
 
やだ、、、もう、、、あの貧しい生活には戻りたくない、、、、、、、、後ろを振りかえっちゃダメよ「J」、、、、、
 
ジュニア、ジュニア、と愛されていた頭文字をつぶやくと、昔を懐かしむ悲し気な顔が再び闘志と美貌を混ぜたように絡まり、音をたてて彼女の中で切り替わった。
そしてそうした全ての思い、矛先がこれから向かう「ぺット達」にすげ替わっていく。
 
私の前に立ちふさがる人はみんな、、、、、そうみんな、、、倒していくわ、、、、そして早くパパとママを楽にさせてあげたい、、、、
 
リムジンの前を千鳥足のサラリーマンがヨタヨタと歩き、警護の者に注意されている。
私の国だったら、、、、、2分と経たないうち身ぐるみ剥がされるわ、、、、、
 
それにしても、、、、この国はなんなの、、、、、
貧富の差こそあれみな平等のもと自由競争をし、なに不自由なく暮らしてるではないか。
無駄だと思えるほど煌々と灯ったネオンが車内に入ってくる度、彼女は目を細めた、、、、、、、、、、、、。
 
「ね、、、、ゴルチコフ、、、、なにか番組とかやってる?」
 
そう問う前に、14インチの車内テレビが音もたてず上から降りてくる。この国の討論番組のようだ。
 
「まぁ、、確かにこの国の生活は安定したものに見えるでしょう。しかしですね、その見せかけの豊かさにうつつを抜かした挙句、国民の関心は全て自己の利益にばかりになり精神面での豊かさはないがしろにされました。自らに不利益が明白な形で降りかからない限り無関心を装う。これは悪い癖です。
いや、戦後、奇跡と賞賛される我が国の経済進歩、その過程の中で官僚の果たした役割には大きなものがあった。これは事実です。しかし、今はどうでしょう。国政を司る立場の政治家達は自らの利益に直接的に絡む地域、企業の代弁者でしかありません。官僚達もまた、その権力によって生じた利権を守る集団になり果てました。その腐敗しきった組織を正す機関も存在せず、ただ、ただ、表面をとり繕い国民の目からそらすことだけで良しとする。
国民から吸い上げられた血税は現体制を維持しようとする官僚達によって割り振りされるんです。それも、本当にソレが必要はどうか審議する前に前年実績、というバカな基準が最優先されるんです。こんな国、他にありますか?
今や国民のために官僚があるのではなく、国民が官僚のためにある、と言っても過言ではないのですよ。
実際、法案の9割は行政を司り、それを執行する官僚達によって立案されてるのが現状です。
例えはひどいですが、これは泥棒が人からお金を盗んで、泥棒自身が判決を下し、そして、そのお金を泥棒自身が使う。
これでは目も当てられません」
 
豊かそうに見える国でも色々あるのね、、、、、
彼女はその番組に興味を示したのかボリュームを高くした。
 
「それは当然そう思うのですが、この先行きの見えない景気の悪さは企業30年周期説、というのも関係ある気がしますね」
 
「ええ、、、、一つの産業はほぼ30年ごとに衰退し、次の新しい産業に取って代られる、という説ですね。
しかし、アレは厳密に言うと周期ではなく無能な人間が企業という組織に入り込み、それを滅ぼすまでの年数なんです。
つまり、時代の花形、と言われる業種に入ってくるのは、その時代、時代で最も優秀だ、と言われる人間達です。
しかし、考えてもみて下さい。常に一つの能力だけを試す試験を突波することが、その企業での地位そのものに直結する、と信じて育ってきた人間がですよ、その時代、人気のある企業にどれだけの大志を抱いて入社してくるんでしょうか?
そういう人間達がやがて管理職になり経営幹部となる。まさに今の政治と同じなんですよ」
 
なるほどね、、、、、言われてみればそうだわ、、、、、、、、、
そして、テレビの中、その男は最後に言い放った。
 
「産業というものは進歩します。その進歩を読み切れず、企業形態を時代に合わせ変化させる手を打たずに一つの産業に固執する経営者は無能以外の何者でもありません。しかし、この30年説が語られるように世の中には無能な経営者の方が遥かに多いのです。テレビをご覧の皆さん。
自分の進む道、会社の方向性は約束されたものであり、あえてその環境を壊してまで危険を冒す必要はない。反抗分子になりたくない。とにかく人間関係だけうまくやっていきたい。そう思ってるあなたです。その考えが今の官僚達の考えそのものだということをお忘れないように、、、、では、、また次回お会いしましょう」
 
この国の社会構造、価値観、真理というものが少しだけ分かった気がした。
しかし、、、しかしだ。母国に比べれば遥かにマシだった。
この平和そうな街のどこのマンホールに子供達が住んでるっていうの?ヤクザだってロシアンマフィアと比べれば赤ちゃんみたいなものだわ、、、、、
彼らは実に良く分かっている。重火器そのものを国内に持ち込む難しさもさることながら、そんなことをしたらこの国の警察は黙っちゃいない。徹底的にその組織を潰しにかかってくるだろう。向こうに行けば自動小銃なんかはお金をつめば簡単に手に入る。
幼いころ、父から連れていってもらったイルクーツク近くの射撃訓練場で行われていた闇取引が目に浮かんできた。
Cー4、クレイモワ、RPGー7、スティンガー、その他、私の知らないオドロオドロしい武器が人の手から手へ流れていた。
 
やっぱりお金でしょ、、、、、、、豊かさのあまり自己利益のためだけになる、ですって、、、、当たり前じゃないの、、、、
そういう社会にしたのはあなた達自身でしょ?、、、、、ホントにご機嫌な国ね、、、、、
平等を重んじながら競争もけしかける、、、、まったくナンセンスだわ、、、、、、
 
彼女の母国崩壊後、国は軍隊を維持する予算をさく余裕もなく、軍人への給与は遅配につぐ遅配が繰り返されていた。
自由経済の波は物価の高騰に繋がり、ただでさえ安い給料に遅配、そしてインフレのダブルパンチが家族を襲うのにそう時間はかからなかった。
やがて、なにもかもやる気を無くした彼女の父はアルコールという逃げ場所を見つけることになる。
自分が高熱を出した時など、母が売血をし医者に見せたほどだった。
 
だから、それゆえ、掴み取ったチャンスは逃したくなかった。
なんとしてでも今のポジションを維持し両親を楽にさせてあげたい、、、、、、そう思う彼女の望みは当然の成り行きだった。
 
テニス、という競技に彼女が目覚めたのは、わずか5歳の時だった。
小学生部門の地区大会で優勝し、12歳の時にはレニングヤードで開かれた国際大会でなみいる強豪達をねじふせていく。
地元の新聞では「神秘の精霊」とまで揶揄され、もはや国内に敵になる者などいないと知ることになる。
両親は国が付けた専任コーチの強い勧めもあり、彼女を欧米の名門リーグに遠征させることに決める。そのとき捻出しようとした費用を稼ぐため、アルコール漬けの体を酷使したのが原因だったのだろう。父は今でも片足をひきずりながら歩いていた。
 
そうした両親の想いを武器に彼女はその才覚をいかんなく発揮していく。ウィンブルドン、マンチェスター、ミカドエル、名だたる大会を総なめにしたのは彼女が15の時だった。
特にその長身から繰り出されるコースをついたサーブと、バックハンドの正確さはコーチ陣をも唸らせるものがあった。
一部のファンキーなファンにより撮られた一枚の写真が、その後ヨーロッパ全土を駆け巡ることになる。マスコミ各社はこぞって彼女の全貌を知りたがるが、隠匿好きな社会主義国家はそれを許そうとはしなかった。
 
そしてソ連邦崩壊、、、、突如、天使のように舞い降りた彼女はその「見かけ」も手伝い瞬く間に「時の人」になっていく。
必然的にスポンサーも我れ先にと飛びつき、富と名声を掴んだのは忘れもしない、ちょうど一年前、彼女が17の時だった。
 
しかし、時間を得ずして成り上がった人気というものは落ちるのもまた早い。そのことを彼女はよく知っていた。
 
常にナンバー1でありたい、という願いは時に人を自虐的にする。テレビカメラに見せるポーズと愛らしい笑みの裏では消えることのない闘争心がメラメラと燃えさかり、負ける、ということの恐ろしさが「貧困」という文字に直結した。
それは夜中、うなされ、目覚める、という形で出ることも珍しくなく、彼女のメンタルを次第にか細くさせていく。
 
だが、そうしたプレッシャーを少しでも和らげ、やえもすれば打ち勝つ方法がある、ということを彼女は知っていた。
 
ホテルのロビーに横付けされたリムジンの中、彼女はこれから訪れるであろう至福の時間を味わうように、濡れた舌を唇に滑らせた。
 

                                                その2へ

てんちゃんの目次