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落城前夜 (6)
桐の間の乱痴気騒ぎをよそに、源次郎を嫐り続けていた大座敷の方もまた、佳境を迎えつつあった。
萩の間の茂吉と同じように、女達によって好き放題に嫐られてはいたが、茂吉の方はなんと言っても、この堀江家に代々仕えてきた御用人。いわば身内のようなものであり、美男の誉れ高い茂吉を手込めにするということは、愛情の裏返しのような複雑な意識が伴っている。
一方、この大座敷で繰り広げられている嫐りの様相は、敵の一族である源次郎に対して、持って行き場のない怒りや憎しみをぶつけるという、もっとストレートな感情がもろに噴き出している。
だから同じように男を慰み者にしているようで、源次郎に対するそれは、彼に快感を味あわせるような必要性はなく、むしろ苦痛を与えてその苦悶の表情を見ながら女達が楽しむことに力点が置かれていた。
だから何度も何度も手だけで絞り尽くしたかと思うと、今度は細紐で男根の根本を縛り上げ、射精が出来ないようにした上で、さらに手で責め続けるという、男の尊厳を踏みにじるような行為が延々と続けられていた。
「ぁぁぁぁ・・・ゆ、許してくださいぃぃぃぃ・・・」。
涙でくしゃくしゃになった顔をして、源次郎は自分を取り囲んで嫐り続けている女達に哀願していた。いくら心を込めて許しを乞おうと彼女達が決して許してくれないことは彼にも十分に分かっていた。でもそうせざるを得ない。この行き場のない快楽地獄から解放されるためなら、どんな恥ずかしいことでもできた。
根本を堰き止められた彼の男根は既に赤黒く変色し、出口を堰き止められて行き場を無くした精液が陰嚢の奥底を駆けめぐっている。ガクガクと身体を震わせて痙攣を繰り返しているが、射精時に訪れるはずの開放感はなく、ギリギリ手前のじれったいだけの快感を強制的に味あわされ続けている。
そんなわけだから、彼の男根は勃起をしたままで決して萎える事ができない。女達が彼を責めることにあきるまで、いつまでも永遠に彼女達の責めを受け続けなくてはならないのだ。
「ああ、はあああっっっ!・・・もう、もうっ、我慢できませぬっうっ・・・・、ど、どうか・・・・どうか、ひと思いに、こ、殺してくださいませっ・・・・」。
もはや精も根も尽き果てたかのような表情で源次郎は訴えた。友好関係が崩れ敵対関係になったとき、人質という存在がどのような目にあうか、源次郎とてその運命は覚悟をしていた。今更命ごいをしようとは思わない。首を刎ねられようと磔になろうと、戸田家の武士として立派に死んで見せようと考えていた。
しかし、今宵の源次郎に降りかかった災難は、彼の武士としての尊厳を踏みにじるものだった。何十人もの女達に寄ってたかって嫐られることなど、誰が想像できようか。まるで女のように悲鳴をあげながら、ただ一方的に女達の狼藉に悶え続けねばならない屈辱。たくさんの女達にその無様な様をさらし続けねばならない恥辱。このまま嫐り続けられ衰弱していくなど、武士としてそんな醜態はとても耐えられない。
「なんか少し痛々しゅうなって参りましたな・・」。
「なに気にすることはない。こ奴は憎い敵の男ということを忘れてはならぬ。こ奴のアソコがどのように成ろうとも、それは戸田の自業自得なのじゃ。こ奴が恨むは我らではない。恨みたければ戸田の家を恨むがよいのじゃ」。
「その通りじゃ。こ奴がどのようになろうと、それはこ奴のせい。こ奴が潰れようと壊れようと、どうなろうと我らの知らぬことよ」。
「それにしても、たいしたヨガりようじゃのぉ。まるで、か弱きおなごを我ら一同で手込めにしておるようではないか。ほっほっほっ・・・」。
「それはそうでございますぞ。今宵は、我らおなご衆みなで、か弱きおのごを一人、手込めに致すのよの。いや、犯して犯して、嫐り尽くすのじゃから・・」。
女達が交わす言葉から、彼女達の責めがさらにエスカレートすることはあっても、手加減されることなどは、まだまだなさそうだ。
一方、女達の騒ぎから少し離れたところで、ひそひそと声を潜めて話す女達がいた。今宵の無礼講を演出している張本人達である。
「お多恵様、そろそろ刻限もよろしいかと・・・。本気で嫐りませぬか」。
「なに、これでもまだ本気ではないのか?」。
「はい。今からが本当の嫐りでございます。お灯明の明かりも消して。あれを直に食してみたくはございませぬか・・・?」。
「ふふふっ、そうじゃな。明かりがついておっては、妾がそこに加わる訳にもいかぬからのぉ・・・」。
「ほっほっほっ。多恵様もお好きであられまするなぁ・・」。
「ふふっ、皆もそうじゃて。皆もそれを期待しておる・・」。
「では早速に・・・」。
大座敷を明々と照らし出していた。多恵の命によって、十数本のお灯明の明かりが、手の空いている女中達によって次々と吹き消されていった。煌々と照らし出されていた大座敷が、しだいに薄暗くなり、そしてまっくらな世界になった。
「ああああんんんっ・・・」。
「あはあっ、はあっ、はあんっ・・・」。
「きゃあんんっ、はっはっはあああんっ・・・」。
真っ暗な闇の中に、女達の嬌声がひときわ大きく響き渡る。いくら無礼講だからとて、同性の目にあられもない姿を晒すことは、この時代の女としてははしたない事。だから好きなように振る舞っているようにみえて、女達の心には歯止めがかかっていた。そして今、その歯止めが解き放たれたのだ。
庭先からさす幽かな月明かりの中で、女達は我先に帯を解き、自らの裸身をさらけ出していく。灯明の明かりがあれば、それは贅沢な光景だったであろう、何十人もの若く美しい女達の裸身が大座敷を埋め尽くしていく。
そしてまるで堰をきったかのように、我れ勝ちにその火照りきった肉体を、たった一人の哀れな生け贄にぶつけていく。もはや遠慮も何もない、本能のママに男の肉体を貪るという、ただその一点に向けて、源次郎の身体に群がっていった。
「あぎゃああーーーーっ!!!」
「ひいいいいーーーーーーっ!!!」
悲痛きわまりない源次郎の声が一瞬だけ聞こえたが、すぐに女達の肉体に埋め尽くされて、その声はくぐもったうめき声になってしまう。悲鳴を上げようにも、口に女の秘所が押しつけられ、濡れぞぼった女陰によって塞がれてしまったのだ。
「ふぐぐぐっっっっ・・・おぐああっ・・・・!!!!」。
「あはあああんっ・・・あんっあんっ・・・」。
「わらわじゃ、わらわがさきじゃ・・・」。
「ああんっ、ほれ、ほれ、手があそんでおるぞ、わらわのここを・・・・」。
「おとこじゃ、久しぶりのおことじゃ・・・」。
「わ、わらわにも・・わらわにも触らせてくだされ・・・」。
「はあんんっ、肌が触れておる、固い殿方の身体じゃ・・・」。
根元を固く縛られ、精を吐き出すことを堰き止められたままの源次郎のオトコが、誰のものとも知れない女陰の中にくわえ込まれる。
その女性自身でしか味わう事のできない、独特のぬめりのある感触が、源次郎の脳天に最大限の快感を送り込む。根元を堰き止められてさえいなければ、その挿入の感触だけで一気に精を迸らせたことだろう。しかし今の源次郎には射精の開放感を味わう事は許されてはいないのだ。
「ぐふふふーーーーっ、ぐふっっっうううっっ・・・」。
ぐぐもった悲鳴と共に、縛められた手足をピンッと張って、その乱暴狼藉に抗議をしてみたところで、女達の誰一人としてそれに気づく者はいない。何人もの女にのしかかられて、呼吸困難になりながら身体中を痙攣させ続けるだけなのだ。
縛られたペニスの根本に紐が食い込み、かつてないほどに肥大した源次郎のペニスは、ただ挿入しただけで女達を喜ばせるに十分な太さを持っていた。女達は狂喜し腰を振り続け、十分に快感を貪って満足をして、次々に入れ替わっていく。
しかし、当たり前の事だが、源次郎には終わりがない。男の性欲とは射精をもって絶頂を迎え、射精を持って完結する。射精が出来ないということは、その絶頂の手前で足止めをされたまま、決して絶頂を味あわせてもらえず、その寸前の感覚をずっと強制されることだ。
男にとってこれほど辛いことはない。これこそまさに拷問でしかない。女達が彼の上にまたがり快感の極楽を味わっている間、源次郎の方は彼女達の下敷きになったまま、快感の地獄を味あわされ続けるのだ。
柔らかい女の裸身に全身を覆われ、皮膚という皮膚から女体の感触が襲いかかる。口を塞がれて息が苦しい。わずかな隙に息を吸い込むと、その空気には女の肉体から迸るメスの臭気に充ち満ちている。真っ暗ななかにうごめく女、女、女。目には見えないが彼の目にはピンク色の靄が立ちこめていた。彼女達が上げる艶めかしい嬌声や喘ぎ声が、大ボリュームになって耳から脳内を駆けめぐる。
「ああああああっっっっ・・・・あうっ・・・・・ああああああ」。
身体中の筋肉を無意味にピクピクと痙攣させ、襲い来る猛烈な快感の嵐の中を、ただ耐え続けるだけの源次郎。ペニスの先からは一滴の精液すら出ていないというのに、もう何十回、何百回と、頭の中では射精を繰り返していた。それは残酷で終わりのない快感地獄なのだ。
彼の頭の中にはもはや戸田家のことも、武士としての対面も、何もかもが崩れ去り、ただ自分を嫐り続ける女達のことしか考えられなくなっていた。女達の道具としてただ嫐られるだけの存在と化した源次郎は、もはや生ける屍も同然だった。
「あううう・・・あう・・・・はうっ・・・・・」。
無礼講が始まってから、既に二刻、4時間という時間が経ってた。上の間や萩の間の乱痴気騒ぎはようやく終盤を迎え、あちらこちらで疲れ切った女達と気絶した数人の男たちが寝息を立てていた。
しかし、ここ大座敷での嫐りは、まだ続いていた。人数は多少は減ったとはいえ、依然として絶え間のない寸止め性交を強要され続けていたのだ。とても正視に耐えないほどに衰弱し、女達の間から時折のぞく、彼の目は大きく落ちくぼみ、口元からは大量のよだれを流していた。
もはやとても正気を保っていることも叶わないだろうと思えた。それほど女達の嫐り方は容赦が無かった。しかし彼はまだ狂ってはいなかった。いっそ狂う事ができたなら、どれほど幸せだったろう。無限に続く快感の連続、いつ果てるともしれない地獄の快感、それを何の抵抗も出来ず、ただ耐え続けることがどれほど辛いか。女達の道具として玩具として、ただ肉体だけを延々と使われることがどれほど哀れか。
ああああっ、またっっ。でるうっ・・・・!
涙すら枯れ果て、狂いそうになりながら、必死で耐え続ける源次郎。もうすぐ夜が明ける。夜が明けたならば・・・。それにそろそろ女達も疲れ果てて来ている。その証拠に大座敷のあちらこちらで寝息が聞こえているからだ。
あううっ・・・。再び訪れる数知れない何度目かの快感。そしてペニスが解放され、上になった女がばったりと倒れる。あと少し・・・。あと少し・・・。
ぐにゅうううーーっ。次の女が上に乗り、再びペニスが銜えられたことが分かる。狭くてきつい感触が襲いかかり、強制的な快感が再び身体中を駆けめぐる。そして源次郎は歯を食いしばってそれに耐える。と、そのとき。
「おほほ、ここの殿方はまだまだ元気いっぱいのようじゃのぉ」。
「おお、ほんに、気持ちよさそうな顔をして耐えておるぞえ」。
「わらわ達も加えてくださらぬか」。
「あちらの男はもう役に立たぬのじゃ、貸してくりゃ」。
にぎやかな声と共に新手の女どもが、大座敷になだれ込んできた。他の部屋で精を搾りつしもはや用をなさない男に見切りをつけた女達が、大挙してこちらに移動してきたのだった。
もちろん、女達によって押さえつけられている源次郎には、彼女達の行動に異議を唱える事も、拒否をする事も許されるハズはない。ようやく終わりが見え始めたと思った彼の希望は、あっという間にうち砕かれ、目の前が真っ暗になった。
「うぐぐぐーーーーっっっっっ!!」。
もうイヤ、本当にもうダメ、これ以上は! 源次郎の精一杯の抗議は聞き届けられることはなく、新手の女達は嬉々として、帯を解き着物を脱ぎ捨て、源次郎の若い身体に群がっていく。
こうして哀れ源次郎は、たちまち女達の肉体に覆い尽くされ、絶望的な嫐りが再開された。
(完)
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