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灼熱の荒野の果て (2)
「オンナ!!・・・・」。
男は思わず歩をとめ、そして素早く岩陰に身を隠した。
オスにとってオンナとは最も危険な存在だった。この荒廃した世界において、「オンナ」とは過去の文明社会における「女」ではもちろんなく、そして「男」はただ「オス」でしかない。オスにとってオンナとは、保護者であり支配者でありそして簒奪者だった。
残留放射能の影響で男女比率が1:100となったこの世界では、人類とはオンナだけを意味し、オスは生殖のためだけに生存を許された稀少な家畜でしかなかった。現に彼もまたほんの数ヶ月前までは、そのオンナの集団の中で生まれ飼育され、そして生かされ続けてきたのだから。
オンナは窪地の上で、互いの身体をまさぐりあい、からみあっていた。二人の口からは誰はばかることなく快感の嬌声がもれている。
「はああああんっっっっ、あんっ、あんっ・・・」。
「きゃんっ、あああ、はぁはぁはぁぁぁっっ・・・」。
男は危険を感じながらも、いったん目にしたその痴態から目を離す事が出来なかった。集団に飼育されていた頃から、何度も何度も目にしていたオンナ達の交尾行為。それが数ヶ月ぶりに彼の目の前で展開されている。それがオスである彼にとってどれほど危険なものであるかは、彼自身が最もよく理解できているはずだった。その行為こそ、オンナ達がオスを必要とし陵辱を開始するための合図のようなものだった。
しかし、彼は一度目にしたとたんにその場から身体を動かす事が出来なくなっていた。まるでヘビの前でカエルが身をすくめて動けなくなるように、彼の身体は金縛りにあったように固まってしまった。もちろん固まってしまったのは手や足だけではない、その身体の中心で、彼をオスたらしめている器官もまた変化を始めていた。
「逃げないと、あぶない、これは罠・・・・ 危険!」。
男のアタマの中には警鐘が鳴り響く。あのおぞましい日々の記憶が、頭の中に鮮烈な記憶としてよみがえってきた。
幼生の頃には優しく彼を育ててくれたオンナ達。自分がオスであることも意識できず、いつか大きくなれば彼女達と同じオンナになれると信じていた幼い日々。彼女達が絡み合うその行為を、ただ愛を深めるための行為だと何の不思議なく受け入れていた。
しかし彼が初めて夢精し、幼生からオスに成長したことが知られた日から、彼の生活は劇的に変化した。その日を境に、彼は人間からオスに堕とされた。それは奴隷よりも悲惨な家畜同然の境遇だった。この未来人類におけるオスとは、オンナ達の性欲を満たし、種族維持の生殖行為に奉仕する為だけに生存を許された存在だったのだ。
オンナ達の求めにオスは絶対に逆らうことができない。愛を深める行為と見えていたオンナ達の絡み合いこそが、オンナ達がオスを誘い込み性行為を強要するためのものだった。精通を経験したオスはその行為を見せつけられると、条件反射的のように身体中の筋肉が硬直し金縛りにあってしまうのだ。身体が動かなくなってしまうのだから、あとはオスの意志に関係なくオンナ達のなすがままになるしかない。
ぎらついた視線におびえきった彼を、オンナ達は広場に運び込み、目の前であの忌まわしい行為を見せつけた。あっという間もなく身体の自由がきかなくなり動転する彼に、オンナ達は一斉に襲いかかった。彼は泣き叫び必死で助けを求めたが、オンナ達は彼のことをもはやただの一匹のオスとしか見ていなかった。
なにしろオス1匹に対するオンナの比率は10人以上というのがこの時代の人類の常態なのだ。いったんオスに対する陵辱が始まってしまうと、一回の射精だけで許されるはずもなく、次々とオンナ達が群がり寄ってくる。こうして哀れなオスは延々とオンナ達に犯され続けることになるのだ。
その日の彼は辛うじてこのオンナ達の暴虐に耐え抜いた。しかしそれはただの始まりでしかなかった。その日を境にして彼は連日にわたって犯され続けた。次から次ぎにオンナ達は彼の身体に群がってきた。延々と繰り返される逆レイプの日々。
彼らの部族には他にも少数のオスが飼われていた。しかし集落のオンナ達は古くなった他のオスには見向きもせず、この若くて新鮮なオスだけを求めてきた。オンナ達の競争心にも拍車がかかり、とうとう彼は朝から晩まで寝る間もなく犯されはじめた。
食べることもできず、寝る事も出来ず、延々とオンナ達によって姦されるだけの毎日に、彼の身体は急速に衰弱していった。このままでは命がない、そう感じた彼はある晩、ついに意を決して集落を抜け出す事に成功した。
彼らの部族が住みついていた岩山に比べれば、彼が足を踏み入れた荒野の自然はあまりにも厳しかった。常に死と隣り合わせの飢餓に苦しみながらも、彼はこの選択が決して間違っていなかった事を実感していた。あのオンナ達の暴虐に耐えながら、衰弱して死んでしまうぐらいならば、このまま荒野で朽ち果ててしまってもよい。彼は心底からオンナ達の手から逃れる事の出来た幸運に感謝し、またあのオンナ達に対する憎悪を燃やしながら今日まで生きてきたのだ。
そして・・・・
今目の前に展開している光景こそ、思い出したくもないオンナ達のあの行為そのものだった。つまり今この近くにオンナ達の集団がいる。そして彼の存在に気が付いてるのかいないのか、この餌にかかってくるオスを誘い込もうとしているのだ。
しだいに彼の身体が硬直し身動きがとれなくなっていく。身体の中心にある男性のシンボルなどすでに固く天を突くまでになっている。
「だめだ・・・逃げないと・・・」。
彼は目を固く閉じて、少しづつ身体の位置をずらそうとする。絡み合うオンナ達に見つかっていないことを祈りながら、少しづつ少しづつ後ずさる。その動きはイライラするほどユックリだ。
「あはぁぁぁぁぁーーーっ、あんっ、あんっんんっっっ・・・・」。
「はぁ、はあああんっっっ、いいっ・・・・ああっっっ・・・」。
二人のオンナ達のあげる声は、あたりをはばかることなく、さらに大きくそして興奮の度合いを高めていく。
いくら目をつぶっていても、男の耳にはオンナ達があげる嬌声が遠慮会釈も無く鳴り響き、それが彼の神経をさらに高ぶらせていく。そして男の身体は興奮すればするほどますます固く硬直していくばかりだ。
どたっ!!
とうとうバランスをくずしたて、岩山の頂上から低い窪地に向かって、棒を倒すように転倒してしまった。顔面と言わず身体中に激痛が走る。しかしそのおかげで固く固まりかけていた身体の筋肉がほぐれ、なんとか身体を動かせるようになった。
「あぶない、ここ離れる、もっと遠く・・」。
男は身体中の痛みをこらえつつ、不自由な身体をひきづりながら起きあがった。身体中の筋肉がまるで石のように重い。どうやら起きあがるのがやっとで、とても走ってこの場を離れることなど出来そうにない。幸い骨が折れたりはしていない。下半身の筋肉は固く固まったままで、全く動かせそうにないが、辛うじて腕の筋肉だけは正常に戻ったような案配だ。
そろりそろし・・・・
男は這うようにして、少しでも遠くへ、嬌声をあげ続けるオンナ達から遠ざかろうと試みた。と、そのとき。
「ヒョーーーーエーーーーー、フォーー、フォッフォッ・・・・」。
甲高い鳥の鳴き声に似た声が鳴り響いた。
「!!!・・・・」。
男の心に戦慄が走る。
あれは・・・・、そう忘れもしない。あれはオンナがオスを犯そうとする時にあげる、雄叫びの合図。あの忌まわしい日々に何度も何度も聞いたあの声。
いやだ、いやだ、あんなところに戻りたくはない。せっかく掴んだ自由の世界、それが飢餓と裏腹の行き方であろうと、再びあのオンナ達の慰みもののような生活には戻りたくはない。しかし危険は確実に迫っていた。
オンナ達が実際にそこで絡み合っているということは、獲物であるオスの存在をかぎつけたからに違いない。そして近くに潜んでいるオスを誘いだすために罠をしかけ、そこにまんまと誘い込まれたということだ。さらにあの鳥のような雄叫びこそ、獲物を見つけた勢子が、他のオンナ達を呼び寄せる合図なのだから。
まだ硬直した身体は普段の運動神経を取り戻すにはほど遠い。膝は固くこわばったままで曲げることもできない。びっこをひきつつ辛うじて立ち上がり、手近な岩柱に身を隠そうと、そろりそろりと岩陰へと移動を試みる。
「ひょーーーーっほーーーーっ、ほっほっほっ、ひょーーーっ」。
「ふぁーーーぉっ、ひょほっっ、ふひゃっほっ、ひゃーーーっほっ」。
声が次第に近付いてくる。それはひとりだけじゃない複数のオンナの狩人達の声だ。彼らに見つかったが最後、どうなるかは容易に想像ができるだけに、彼は必死だった。額に脂汗が浮き出す。しかし目の前に見えるその岩陰までの距離が、いっこうに縮まらない。どんどんオンナ達の声が近付いてくる。
「ふゃーーーっはあっ!!!!」。
ひときわ大きな声が鳴り響くと共に、彼のさっきまで経っていた岩山のてっぺんに複数のオンナのシルエットが浮かび上がった。
「ほっほっほっほーーーーっ、ほほほほほーっ」。
「ほっほっほっほーーーーっ」。
オンナ達のあげる雄叫びが、歓喜の響きを帯びるのを、男は絶望的な気持ちで聞いていた。その雄叫びを聞きつけて、四方八方からオンナ達が集まってくる。もはや身体が自由に動かせたとしても、この包囲から抜け出す事は不可能だろう。男を取り囲んだオンナ達は、ざっと20人を越していただろう。
みんな褐色の肌に、わずかに胸と腰だけを覆った獣皮をまとっている。獣皮は遠く山岳地帯に住む大型ほ乳類の皮で作られたもので、この世界では狩りをする狩人にだけ着用を許された高価な衣類だ。獣皮をまとった彼らに包囲されたからには、ここから逃げ出す事など不可能だろう。抜群の運動神経を兼ね備えた彼女達は、この未来世界最強の捕食獣といえようか。
そして彼女達の獲物とは、運動神経の鈍い黒虫なんかではなく、たまに荒野に迷い出たどう猛な大型ほ乳類と、群れからはぐれた他種族出身の「はぐれオス」なのだ。今の彼は、まさに彼女達の獲物であるそのはぐれオスそのものなのだから。
「きゃっはっは、このオス、若い、体力ありそう・・・」。
「うん、今日はの狩り、最高。いいオス捕まえた」。
「このオス、ふるえてる、こわがってる?・・」。
オンナ達は口々にしゃべりながらゆっくりと包囲網を縮めてきた。一見はノンビリした会話を愉しんでいるように見えても、オンナ達は決して警戒を怠ることはない。今や男の周囲は完全に彼女達に囲まれてしまった。
周囲を取り囲む20人ものオンナの壁を見上げながら、男は絶望感でいっぱいなって、とうとう泣き出し始めた。
「い、いやだ・・・・。助けて・・・・。どうか見逃して・・・」。
目にいっぱいの涙をうかべ、額を地面にこりつけながら、男は必死に哀願した。そんなことをしても無駄なことは男も十分に知りながらも。
「このオス・・泣いてる?」。
「泣いてる、泣いてる。ワタシらに捕まる、それ喜んで、泣いてる」。
「可愛そう、一人で砂漠、越える、きっと辛かった、涙でる」。
「オス、群れ外れて生きる、とても難しい」。
「これから、安心しろ。ワタシラ、おまえ保護してやる」。
彼女の言った保護という単語に、一抹の希望を託して、男は涙でくしゃくしゃになった顔をあげた。そこに優しそうな笑顔をした一人のオンナがいた。黒髪に大きな瞳、引き締まった体躯に、鍛え抜かれたオンナの力がみなぎっていた。
彼女の面影が、元の部族でオンナ達から犯され続ける毎日の中で、ひとりだけ彼に優しかったオンナに似ていた。心の底に響くものがあり、再び目に涙が溜まってきた。さらに条件反射的に、下半身に血液が逆流を始めていた。
そう、男はこんな状況であるにもかかわらず勃起をしていたのだ。生きるためには、オンナ達に精を提供することでしか生きる事を許されていない、この時代のオスの悲しい性といえようか。
そして、その優しいはずだったオンナの一人が、男の変化をめざとく見つけ、大きな声で仲間達に告げた。
「ははは、このオス、交尾したくてアソコ立ててやがる」。
えっ、何、保護してくれるって・・・。男の運命はこれで決まったようなものだった。オンナ達は獲物を前にして、興奮をし始めていた。
「ホントだ。若いけど、肉柱大きいぞ」。
「そうか、そうか、おまえ、交尾したくで我慢できないか」。
「おう、よし、よし、今すぐに犯してやるぞ」。
「みんなで、たっぷり犯してやろう」。
「砂漠、オンナいない。ここオンナたくさんいるぞ」。
「安心しろ、おまえの白い液、いっぱい絞ってやるぞ」。
「いやだーーーっ、助けてっ・・・・」。
男の顔は恐怖と絶望感で醜くゆがみ、そして大声で泣き叫んだ。
しかし興奮したオンナ達をとどめる術はない。オンナ達は躊躇することなく、目の前のか弱い一匹のオスに群がった。あとは本能のおもむくまま、オンナ達は快楽を貪り、オスは精をはき続ける。この荒廃した未来世界では今や当たり前になったセックス、つまり交尾が開始された。
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