上方落語  ランプのハレム   (前)

 
  毎度、本日も多数のお越し頂きまして、誠にありがとうございます。ひとつまぁ、ばかばかしいお話にお付き合いいただきたいのですが・・・
 さて、世の中大変に便利になりまして、科学万能の時代になりましても、そのぉ、なんとも不思議なことは世の中にはいろいろとあるようでございまして、占いとか魔術、超能力の存在を信じている人もたくさんいるかと思います。

そういう私も、毎朝の目覚ましテレビの占いで、自分の星座が何番目になってるかがやたらと気になったり、はたまた大切な高座にあがる前には、やたらとゲンを担いだりするモンでございます。
 また何か願い事があったりすると、魔法が使えたらなとか、ドラえもんの四次元ポケットがあったらなって思ったりします。人間の欲望には際限がないようでして、おとぎ話なんかの願い事はたいてい3つまでと相場が決まっています。なんで3つなんやって思うんですが・・・。
 
 私やったら1つめと2つ目の願い事が叶ったら、3番目は「もう一回だけ3つの願い事をきけ」といいますな。ほしたら永遠に願い事できますやん。なんでこんな単純なことおとぎ話に出てくる人は気ィつかへんねやろ思いますな。

 さてこれからお話しするのは、そんな何でも願い事が叶うという、不思議な代物を手に入れたある男のお話でございまして・・・
 

 「アリガト、アリガトネ、ホンマニ、アリガトネ」。
 「なんや当然のことやんか。そないに礼言うことあらへんて」。
 「アナタハ、ホントニ命ノ恩人、私キットアナタニオ礼シタイ」。
 「ほんまに気にせんでエエって・・」。
 「私、ニホンニ来テ、コンナニ親切サレタコトハジメテ。トテモウレシイ。コレ、ワタシガ大切ニシテキタ魔法ノらんぷ。コレトッテモ貴重ナシナモノ、デモアナタニアゲルヨ」。
 「な、なんやて、魔法のランプ? それってアラビアンナイトとかいう童話の中に出てくるってやつかいな。確かそのぉーアリバイとか言う盗賊がもろたとかいう」。
 「ありばいぃ? アンタ何イウテンネン。ソレハありばいヤナイ、ソレモユータラありばばヤガナ」。
 「おーおー、兄さんあんた、いっちょまえにツッコミいれてるーやんか」。
 「ソラソーデスワイナ、ワイモモウ大阪デ住ミダシテカラ4年デッセ。コノ4年カンデ、タップリトぼけトつっこみヲ学ンダヨッテナァ」。
 「さよかぁ、ご苦労なこっちゃねぇ。で何かいなぁ、その古ぼけたヤツがその魔法のランプってかいな」。

 「ソーヤ。コレデンネン。ぱっト見ィハ古ボケタがらくたミタイニ見エマッシャロガ。トーコロガコレ、ソノ辺ニ転ガッテルタダノらんぷトハ訳がチャイマス、ナンセ、ホラ魔法ノらんぷヤネンサカイナ」。
 「どーみてもただの古いだけのランプにしか見えへんねんけどなぁ・・」。
 「ワタイノ母国ノいらんノ首都てへらんニアル中央博物館ノ倉庫カラ、カスメテキタ正真正銘ノ本物ヤデ・・タダノぱちもんチャイマス」。
 「それって泥棒したっちゅうことちゃうのん」
 「マアマア、ソンナン気ニシテタラ、大阪人ツトマリマヘン。ただデモラエルモノハ、ナンデモモラウンガ大阪ノ人間デッシャロー」。
 「あほー、なんちゅうこと言うねん、大阪人がセコイっちゅうても、ドロボーはせえへんで。大阪にもちゃんと府警ってのがあんねんさかいな」。
 「シッテマス、スカートハイテテきっぷ切ル人デットャロ。ソーイエバ、最近ハみにすかぽりすッチュウノモ、ハヤッテマンナァ」。
 「それは婦警やがな、わいの言うてんのは府警やがなって、大阪府警・・・って何言わすねん」。
 「ハッハッハー、兄サン、エエつっこみシヤハリマスナァ、ソレヤッタラマルデ大阪の人ミタイデンガナ・・・・」。
 「やかましいわいっ。何ゆうてんねん、わいこそホンマモンの大阪人やがなって。そやけど、あんたホンマに変なイラン人やなぁ」。
 「ミンナニ言ワレルヨ。オマエ吉本イケルッテ」。
 
 とまあなんや訳がわからんまま、魔法のランプとかいうものを手に入れた男ですが、公園のベンチに腰を下ろして、しげしげとそのランプを眺めております。

 「なんや、ようわからんままにもろてしもたけど、これやっぱしヤバいんちゃうんかなぁ・・・・。なーんか見れば見るほどに変なもんやでこれ。あのイラン人の兄ちゃんも、どっか抜けた感じやしな・・。どないしょか。・・・・うーん、このままここ置いてったろかな・・
 あんれ、なんか書いたあるぞ・・なになに、『これを勝手に公園のベンチに置きっぱなしにしたらアカン』ってか・・・えっ、なんでそんなこと判るねん。第一なんで日本語やねん、訳わからへんなぁ
 あれあれ・・今度はまた字が変わったでぇ、なんやてぇ、『訳わからへんことない。これは正真正銘の魔法のランプや』。ええっ、今度は大阪弁で書いてあるでぇ。さっきのイラン人の兄ちゃんが裏でなんか細工しとるんちやうのんかぁ。気味悪なってきよったなぁ・・
 あっ、また変わったで、今度はなんや?『気味悪がってるヒマあったら、さっさとランプを手でこすってみい。ほんまイライラする奴やなぁ』・・・・何やて、やかましいわい、ランプのくせに偉そうに何言うてるねん。こんなもーん、バカにしたらあかんぞーっ」。

 ぽいっと男がランプをゴミ箱に捨てようとしたとたん、つるっと指が滑って、ちょうどランプの縁を擦ったみたいになったんですな。突然、どろどろどろーっと煙が出てきて、その中からなんともまぁ、時代錯誤の大男が現れたんですな。身の丈は2メトールを越す頑丈な体つき、頭にターバンを巻いて、堂々とした口ひげを蓄えています。

 「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」。
 「な、なんやおまえは?、び、びっくりするやんけぇ」
 「びっくりすることあらへんで、あんたが擦ったから出てきたんやさかい。初めまして、わてがランプの魔神でおます。よろしゅうにたのんます」。
 「ランプの魔神やてぇ、ほんまかいな。わい夢みてるんやろかな」。
 「いいえ、夢やおまへん。ほれ、この通りホンマモンの魔神、掛け値なし正札付きのホンマモンやさかいに」 
 「んん?けったいやなと思ったら、何でアラビアのランプが大阪弁しゃべりよるねん。それってヘンちゃうかぁ」。
 「ああそのことかいな。心配いりまへん。わいら魔神はどこの言葉でもありまへん。アンタの脳波に直接しゃべってまんのや。第一あんたアラビア語知りはらしまへんやろ」。
 「そらそや。ワイがしゃべれるのんは日本語だけや」
 「正確に言うたら、大阪弁しかしゃべれまへんやろ、東京弁もあきまへんでしたやろ」。
 「やかましいわい。東京の言葉なんかな、あれは日本語ちゃうねん。わいにとったら大阪弁こそが日本語で、あれはやな・・・」。
「はいはい、もーよろしがな。ややこしい話は抜きや。何でもええから、早く願いごと言いなはれ、3つだけやで、3つ。これ以上はナンボ値切ったって増えまへんさかいな。よろしおますな。あとで後悔せんようにじっくりと考えて言うてや」。
 「ほんまかいな。どんなもん言うても叶えてくれるんかいな」。
 「そーや、嘘やないで。アラビアの魔法に嘘偽りはあれへんねん」。
 「なーんか、その言い方聞いてたらよけい信じられヘンがな・・・まっええわ。ほたら何か考えよ・・・」。
 「どや、金か女か、なんでもええでぇ」。
 「うん・・そやな」。
 「家ほしいんか。とびっきり上等の家でも出せるでぇ」。
 「うんそやな・・」。
 「ギャンブルでいつでも大当たりするってのんもあるで」。
 「うん・・そやな」。
 「社長になる・・・・」。
 「やかましいわい!ちょっとは黙っとかんかい。考えまとまれヘンやないかぁ。ほんまにもう。考えてたら腹が減ってきたがな。そや、魔神おまえちょっとひとっ走りコンビニでもいって、なんか腹の足しになるもん買ってこい。そやなパンよりはごはん系がええな・・」。
 「ひとーつめ。叶えたもう・・・」。
ドロドロドローーーー
 「えっあっちゃう、あっ・・・・」。

 「なーんやねんおまえこれ・・・」。
 「コンビニのお弁当各種。セブンイレブンにファミマ、ファミマのは現在人気中のアジアごはん・・」。
 「あほかぁ。これは願い事とはチャウぞ。わいはオマエにパシリたのんで・・」。
 「一つ目の願い事は、パシリでコンビニ。確かに叶えた。願い事はあとふたーつなり。
 「頼む。これキャンセルして。あの、ほらクーリングオフってやつ」。
 「あきまへん。取り消しはでけまへん。何しろこれ正札やさかいに、返品ききまへんねん。せやからさっきから慎重に選べってアドバイスしてましたやん。諦めてあと二つに命かけなはれ」。
 「くそぉ。えらい大損してもおたがなァ・・・。しゃあないな。でもま、こいつの言う魔法とか言うのがバチモン(偽物)やなくてホンマモン(本物)やということが判ってんからな。それにまだ二つあるねんから、あと2つを慎重に選んだらエエねんや。そやそう思たらエエねん」。
 「次、決まったかいな?」。
 「やかましい。黙っとけって・・危ない危ない、こんなこと言うて二つ目のお願いが黙っとくってなったら、まるで落語やがな・・。慎重にせんとアカンなぁ」。
 「決まりましたか?」。
 「・・・・・・・」。
 「次でっせ、何にしまひょ・・」。
 「・・・・・・・」。
 「大将っ、何握りまひょ。今日は生きのいいネタはいってまっせぇ」。
 「・・・・・・・」。
 「お兄さーん、誰がいい? ねぇ、遊んでってよぉ」
 「・・・・・・・」。
 「ではハイお次の方ーっ、今日はどうされました。あー風邪ですねぇ」。
 「・・・・・・・」。
 「お兄さん、切符を拝見・・」
 「やかましいなっ。何をさっきからしょうもないこと言うてるねん」。
 「そう言うたって待ってるのヒマやし・・早いこと願いごと聞いて、ランプの中でまた、一眠りしたいねん」。
 「ええっ今までずーっと中で寝てたんやろが」。
 「いやー、それがやね。昨日からうちの第三夫人と第五夫人がワイのこと離してくれへんで、一晩中エッチのしまくりやったんや。もー疲れたのなんのって・・・」。
 「な、なんやて第五夫人って、おまえランプの中に女おるんかいな」。
 「そうや。わしらイスラム教では一夫多妻が認められてるよって、わいのような甲斐性のある男はハーレム作ることがでるねん」。 
 「ええーっ、ハーレムってか。そりゃむちゃ羨ましいやんか」。
 「そうでっしゃろ。あんたもハーレム作りはったらよろしいねん。願いこどでやったら何でも叶うんやから、世界中から選り取りの別嬪さんえらんで、あんただけのハーレム作ったらよろしいねん。遠慮することおまへん」。
 「そやな。そやな。そんなこと絶対にでけへんこと願うから願い事やねんな。金とか地位とか名誉とかなんかより、そのほうがよっぽど魅力的やな。よっしゃ、決めたで。それや。それ。願い事の2は、世界中の美女を集めた、わい専用のハーレムや。それ作ってくれ」。
 
 「ふたーつめ。叶えたもう・・・」。
ドロドロドローーーー
 「えっあっ、あっ・・・・なんやぁ」。
 
 突然周りの景色は一変して、そこにはアラビア風の宮殿が出現いたしました。噴水には水が湧きだし。右を見ても左を見ても薄衣をまとった美しい女性達、いったい何人いるのでしょうか。そして男を見つけるなり彼女たちは妖艶な笑みをたたえながら、彼にまとわりついて参ります。

 「うひょっ、ほえっ。おいっ、ちょっと、何するねん、くすぐったいいやないか。ははっ・・・おおっチンコがたってきたやないか・・」。
 「ねえ、うちのこと魅力的でしょ、今日はうちのこと抱いてよね」。
 「何言うてんのんよ、この人はあたしのもんなんやから・・・」。
 「いやよぉ。ね、抱いてあたしのこと強く・・・」。
 「うひょひよっ・・たまらんなぁ・・・おいおい、みんな冷静になって、はい。順番にね。はい。わかったからみんな、とってもカワイイよ」。
 「どーでやす。願い事はあと一つや。早く最後の願いごと決めてくれヘンかな」。
 「おおっ、なんやおまえまだおったんかいな。無粋な奴やな。ここはハーレムやぞ。男子禁制やねんぞ、俺以外は・・・」。
 「そやけど、あとひとつ叶えんと帰られしまへんねん。な、早う片づけてくれまへんか。」
 「わかった、わかった。あと一つやな・・」。

 「ねーえ、まだやのん、早ようエッチしようよぉ。ウチらもう、ほらあそこびちょびちょになってるねんから・・・」。
 「そうやよぉ。あんたはここにいる女性みんなを平等に愛さへんかったらアカンねんよ。それがハーレムの掟なんやからねっ」。
 「そうよぉ、私たちみんな、貴方が気持ちよくなるんだったら、いつまでも愛してあげちゃうんだから・・」。

 「うーん、みんなちょっとだけ待ってや。後でな、ちゃんとたっぷりとエッチしてあげるさかい。少しだけ考えさせてほしいねん、なっ」。
 「いややっーっ。もうあたし一秒も待たれへんわ。ジラすんやったらみんなで貴方のこと襲ってしまうかもしらんよ」。
 「そうそう。そんな大男なんか、さっさとランプの中に戻してしもて、早うウチらと楽しもよぉ。もう我慢でけへんよぉ」。
 「今晩は寝させてあげへんよ、覚悟してや・・・」。
 「ほぉらぁ、早う服脱いで。もうアソコもビンビンになってるんちゃうのん、ほぉらぁー?」。
 「ふふっ、そうみたいやよ。見て見て、すっごーく逞しくて素敵なチンポしてはりますえ」。

 「うーん・・困ったな・・みんな・・・ああーっ、もう・・・。こんな状態で考えるなんできる訳あれへんがなぁ・・・もうどーにでもなれや・・」。
 「ふふっ。ねっ、そんなヤケ起こしたらアカンよ。貴方はあたし達のご主人様やねんから」。
 「ねぇ、どうやろ。その最後のお願いなんやけど。貴方のチンチンが絶対に小さくならへんようにするってのはどうやろ。なんでってみんなを愛してくれはるっていうのに、もし立てへんようになったら悲しいやん。どう・・」
 「そうやそうや。それってエエ考えやと思うわ。うちも賛成やしぃ」。
 「ねぇ、そうしぃって。永遠の性欲、無限の精力ってやつよね。それってむっちゃステキやないの」。

 「えっ・・そうかな・・そう思う?」。
 「そうよ。私たちにとって、それは最高のごちそうやわ。あんたが私たちと永遠に楽しいことするためにも、それは不可欠の条件や思うわ」。
 「そうしなさいよ。ねっ。私たちとずーっとエッチしていたいでしょ」。
 「うーん、そりゃそうやけど・・・」。
 「ねっ、考えてたってアカンよ。それしかあれへんわ」。
 「それとも、ウチちとエッチしたないわけ?」。
 「いや・・・そんなわけじゃ・・・・」。
 「もう優柔不断はサイテーやよしぃ。男はんやねんからチャッチャと決めてしまいよしぃ」。
 「お願いだからさ。ねっ」。

 つづく
 

      小説のトップへ戻る     その2へ

ランプのハレム(1)