逆援助交際の男     (その2)

 
 「なに緊張してるのよ。ねっ、ジュースでも飲んでリラックスしたら」。
 エリが出してくれたジュースのグラスをさして、ナツミがつげる。ナツミ、この部屋の所有者にして、今晩の俺のクライアントだ。

 たしかにリラックスしなきゃな、俺は思った。でもどうにも落ち着かない。その原因はこのマンションに入るときにチラッと見えた看板。そこには「○△女学院短期大学 学生寮」とかかれていたのだ。

 ○△女学院といえば、有名なお嬢さん大学だ。学費が高いので、お金持ちの娘しか入れないといわれていて、夕方ともなるとお迎えの外車が並ぶという噂もある。このきれいなマンションもそのまま買い取って学生寮にしたということなのだろうか。

 とはいえ女学院の学生寮なんだから当然に玄関から上は女性専用であって、男子禁制のはずだ。 ところが俺はノーチェックのまま玄関を抜けて、エレベーターに乗り、そしてこの最上階にあるナツミの部屋に案内されてきた。

 エリとナツミの二人に挟まれたままでエレベータに乗ったときなど、禁断の園に拉致されて行くみたいで、どきどきするような興奮と妙に心細い気持ちがない交ぜになっていた。
それからもっと気になるのがエレベーターが最上階についた時のことだ。

 エレベーターのドアが開いたとたん、ちょうど部屋から出ようとしていた女の子と鉢合わせしてしまったのだ。 しまった!見られた! と俺はびっくりしたのだが、エリもナツミもそしてその女の子も、べつに気にする風でもなく自然に挨拶をしてすれ違ってしまったのだ。その女の子なんか、俺にウインクまでして・・・

 ナツミの部屋に通されてすぐに、俺はその疑問を口にしたのだが、ナツミは「キミだけはね。特別なのよ」とだけ答えて、あとは謎めいた笑みを浮かべながら、エリと顔を見合わせるだけだったのだ。

 特別?それはいったいどういう意味なんだろうか。そしてあの女のこの態度、どうみても男子禁制の女子寮に男を連れ込んでいることを異常にも思っていない。そんな疑問が解次々に湧いてくる。いったい・・・。

 とそうこうするうちに、エリがなんでも寮の行事の準備をしないといけないとかで、部屋を出て行ってしまった。俺的にはひょっとしたら3Pができるかもと密かに期待をしていただけに、正直なところ少しだけ残念に思ったけど、そんな表情は絶対にクライアントに見せてはならないのだ。

 よし。いつまでもフンイキにのまれてばかりじゃだめだ。なんといったって、今晩はこのナツミさんが俺のクライアントなんだから。せっかく俺を選んでくれたんだし、精一杯彼女を楽しませてあげなくちゃ。俺は逆援のセミプロとしての自覚を取り戻そうと、彼女が奨めてくれたジュースを一気に飲み干した。

 ン?・・・・。俺はジュースを飲み干してから、そのジュースがただのジュースじゃないことに気が付いた。俺の表情を面白そうに眺めながら、ナツミが話しかけてきた。

 「ふふっ。変わった味がするでしょ」。
 「こ、これってお酒?」。
 「そう、お酒も入っているけどね。でもそれだけじゃないのよ。エリちゃんが特別にいろんなジュースをブレンドして作ってくれた、ト・ク・ベ・ツ製なのよ」。
 「はあ・・そうですか・・でもとてもおいしいです」。
 「そおぉ。ふふっ、お口に合ってよかったわ。なにしろ今晩はガンバってもらわないといけませんからね・・」。

 がんばる?。俺はナツミの意味ありげな笑みを眺めながらその意味を悟った。そうか。そうなのだ。俺は今晩一晩かけて彼女を喜ばせてあげるのだ。こんにな美人とできるのだから俺にとつても不足はない。俺の持っているテクの全てを駆使して、朝まで彼女をよがらせてやろう。

 俺は今まで座っていたソファーから立ち上がると、ゆっくりとナツミに近づいていった。

 「ナツミさん、それじゃあ・・・」。

 俺は彼女に右手を差し出して、まず彼女を抱き寄せようとした。女性をエスコートするためには、まずムードづくりからだ。逆援を申し込んでくる女性の大半は、普段からあまり男性に優しくされた経験のないことが多い。彼女のお姫様願望をうまくくすぐってあげることが、この仕事の大切な部分なのだ。

 彼女は俺の差し出した手に、にっこりとほほえみんで、上品な仕草でソファーから立ち上がる。ふたりの距離はほんの数センチだけ。彼女の豊かなバストが俺の平板な胸に触れ合い、彼女の紅い唇が目の前にある。

 俺は目に力を込めて、彼女の美しい瞳を見つめながら、ゆっくりと唇を近づけていった。同時に左の手を彼女のくびれた腰に回し、そっと抱き寄せる。まるで愛し合う恋人同士のように。

 と、そのときだった。彼女は突然、人差し指を俺の唇に当てながら、すつと体を引く動作をしたのだ。彼女をみると、その表情は今までと変わらずに笑みを浮かべている。

 ん?。どうしたんだ?。キスが怖いのか?それとも何か彼女の気分を害するようなことをしてしまったのだろうか・・・。

 「ちょ、ちょっとガロさん、もう少し待ってくださらないかしら?。そんなにあわてなくったっていいでしょう。夜は長いんだし・・」。
 「あ、うん、そ、そうですね。ごめんなさい」。そんなことを言われてよけいにあわててしまう俺。ほんと今日は予想外の展開が多すぎる。

 「あ、いいのよ。気にしなくって。ガロさんがどうこうってんじゃなくってね・・・。エッチの方はあとでたっぷりしとしてもらうからさ・・・。その前に確認しときたいことがあるんだ」。
「確認・・ですか?」。
 「そうなの」。
 「はい。いいですよ。どうぞおっしゃってください」。自分の発した言葉とは裏腹に、だんだんと不安が大きく膨らんでいく。

 「確認たって、簡単なことなのよ。つまり、キミの身体は今晩一晩、私が買いとったと言うことでいいわよね」。
 「はい。そういうことになりますね」。
 「ということは、今晩に限ってはキミの身体は私の自由にさせてもらってもいいということでいいわよね」 
 「はい、そうですね」。
 「じゃさ、ちょっと変わった趣向をさせてもらっても、キミはそれにつきあってもらえると言うことでいいのかなぁ」。 
 「えっ、変わった趣向ですか?」。不安がどんどん膨れ上がっていく。いつたいこのお嬢さんなにを言い出すんだ。

 「ふふふっ、なんか心配そうな表情しちゃってるわね」。マナミはまるで猫がネズミをいたぶるかのような、いたずらな表情で俺を追いつめる。
 「だって・・・で、どんなことするんですか」。
 「ふふふっ。心配?。心配よね。ふふっ、教えたゲルわ。ズバリ、一種のエスエムっていったらいいのかな。そんな感じのものね」。
 「えっ、SMですか。それってムチヤローソク使うって言う、あれですか」。
 「ううん、ムチヤローソクは使わないわ。もしもガロさんにそんな趣味があるんだったら別ですけど・・・」。
 「いやいや、そんな趣味はありませんよ。痛いのはどうも・・・」。俺は大慌てでかぶりをふった。

 「ふふっ、大丈夫よ。私にもそんな趣味はないわ。安心して。私が希望するのは・・どういったらいいのかな、んーと、つまり拘束プレイなの」。
 「拘束プレイ?」。
 「うん、そうなの。つまり男の人をベッドに裸で縛り付けておいてから、私が上になってその男を一方的に犯すの」。
 「ええーーーーっ!」。
 「ね、おかしいでしょ。ヘンタイって思うでしょうね・・」。
 「あっ、いえいえ、そんなことないですよ」。あわてて否定する俺。ふっと彼女の表情がゆるんだ。

 「ごめんなさいね。でも・・・こんなこと、恋人になんか頼めないし・・。変に思われたくないじゃない・・。でも、どうしてもね。してみたかったのよ・・・」。
 彼女は赤面しながら、語尾の方はほとんど聞き取ることができなかった。
 そうかぁ。なるほどね。俺は納得した。

 「いいですよ、ナツミさん。オレ全然平気だから。やりましょう、その拘束プレイっての。面白そうじゃないですか。第一、そのための逆援クラブなんだしさ。オレもそんな経験全くないけど、全然いいっすよ。やりましょう」。
 ナツミの表情がいっぺんに明るくなった。
 「本当に?」。
 「はい。男に二言はありません。ははっ、オレって今晩一晩中、ナツミさんに犯されまくっちゃうってわけなんですね」。
 「ふふっ、そう・・・。キミを犯しちゃうのよ」。
 「もうやめてったって許してくれないんだぁ」。
 「そう。絶対に許してあげないの。何度も何度も犯しちゃうんだから」。
 「はははっ、怖いなあ。体中の精液全て搾り取られちゃうんじゃないのかなぁ」。
 「そうよぉ、みんなが満足するまで、身体が干からびちゃうぐらいまでる搾り取ってあげるんだからね。覚悟してちょうだい」。
 「はははっ」。
 「ふふふっ」。ふたりは声を上げて笑いあった。

 今思えばなんとウカツだったんだろうかと思う。彼女が口にした「みんな」という単語を意識することなく聞き流してしまったオレが悪いんだろうけど、こんなトラップがあるなんて、そのときは夢にも思わなかったんだ。
 オレは彼女の指定されたベッドに全裸になって横たわり、そして両手と両足を大の字の状態でベッドのポールに縛り付けられた。拘束に使ったのがロープなんかじゃなく、彼女が履き古したストッキングというのも、オレを異様に興奮させた。
 おまけに彼女がさっきまで穿いていた下着をオレの頭にかぶせてきたのにはびっくりした。彼女のなま暖かい体温とかすかに匂う女性自身のニオイがさらに興奮を誘い、オレの下半身は恥ずかしいばかりに勃起してしまっていた。このあと襲いかかる運命も知らずに・・・・・。


 つづく
 

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