赤いイナゴの大群

 第9話  脱走兵達の洞窟に差し入れられたあわれな役者

 

レイラは刑場のはずれに作られた豚小屋に近づいた。小屋の警備に当たっていた兵士が直立礼で、掲示用の責任者を迎える。
 「異常はないか?」。
 「はい。さっきまで中の一人がなにやら叫んでいましたが、今は静かになりました。」
 「そうか。こいつらの処分が下命された。ただちに処分する」。
 「はっ。では?」。
 「そうよ。穴に放り込むのじゃ。これは面白い光景になるぞ」。

 警備の兵とレイラは同時に笑みを浮かべて、豚小屋の中をのぞき込んだ。

 そこには近くの森の中で捕らえた山賊の男が三人、着衣を全てはぎ取られ手も足も拘束されたままで放り込まれていた。3日前に偵察行動中の部隊が、森の中で見つけ拉致し連れてきたものだ。

 ひと思いに殺してしまっても良かったのだが、何でも彼らは逃げ遅れた避難民の女を、数人で寄ってたかって陵辱している最中だったというのだ。偵察隊はその現場に躍り込み、数人の山賊を斬り殺した上、首領とおぼしき男とその手下らしき二人を生け捕りにしてきた。

 彼女達の倫理に照らしても、男がこのような行為をすることは絶対に許されない。女という性に対する最大の侮辱であり、見つけ次第、最大限の苦痛を伴う処刑を施すことができる。偵察隊長はこの山賊共を、軍団兵士の見守る中で残酷な方法で処刑すべきだと判断し宿営地に連行してきたのだ。

 「レイラ様、ごらんのとおり山賊は三人おりますが、穴へは三人とも同時に放り込みますか、それとも一人づつになさいますか」。
 「同時では面白くなかろう。じっくりとジワジワ、それが私の流儀じゃ。さて最初のイケニエはどいつにしようかの・・・」。

 レイラはこの瞬間を待っていた。この遠征が始まってから、何日かに一度の割で行われる、捕虜の男をみんなで犯して弄ぶこと、しかし彼女はそれだけでは満足できなくなっていた。脱走兵の処分を任されたときから、密かにもっと過激で淫らなことを試したくなっていたのだ。

 小屋の中の三人はいずれも着衣は全てはぎ取られ、全裸のままで手枷と足枷をつけられていた。手枷には首の部分にも穴が空けられて首枷ともなっているため、脱走はおろか身動きもままならない状態に置かれていた。

 レイラと兵士がのぞき込むと、三人のうちの一人、頭領とおぼしきヒゲモジャの男は、大胆にも豚小屋の中央で大いびきをかいて寝ており、他の二人が怯えた目で彼女達を見返した。右側にいた手下の一人は、偵察隊が躍り込んだとたんに現場から逃げ出し、大岩の下でブルブルと震えているところを捕まえられた。いかにもズルそうな小男だ。
 
 そしてもう一人、色白で整った顔をしているこの男は、その現場では近くの立木に荒縄で縛り付けられていたため、陵辱されている女の連れ人かと思われた。しかし戒めを解いたとたんに女も顧みずに、一目散に逃げ出そうとしたため、やはり山賊の一味であると判断された。立木に縛られていたのも、何らかの山賊達の掟を破ったたためその罰を受けていた程度に解釈された。

 レイラの顔を見つけて、色白の男がまた叫び始めた。食事も与えられていないので衰弱はしてはいたが、顔には必死な表情が浮かんでいた。本能的に処刑が近いことを悟っているためだろう。

 「たすけてください。私は決して盗賊なんかじゃありません。これは何かの間違いです。私は秀白という役者を生業とする者。決して怪しいものではありません。たまたま盗賊達に捕まってしまい・・・・。どうか、どうか私を釈放してください。お願いですから・・」。
 
 「何を言ってるのだ」。
 レイラは眉をひそめて隣の兵に聞く。
 「はい。当地の言葉なのでよくは判りませんが、さしずめ命乞いをしているだけのようですが・・」。
 「そうか・・・。ならば最初の一人は、そのうるさい奴にしようか」。
 「かしこまりました」。

 しばらくして、豚小屋の中から色白の男だけが引き出されてきた。男は久しぶりに見る明るい光に目を細めている。てっきり自分が解放されると思ったのか、顔には満面の笑顔が浮かんでいる。
 
 「ありがとうございます。看守長のお姉さま、本当に感謝します。私はここで見たことや聞いたことなど、他人には一切言いませんし、秘密も守ります。お約束します。それに・・・」。

 刑場担当の兵士達に囲まれて連れてこられたのは岩山の洞窟だった。男はまだべらべらとしゃべり続けいる。レイラは男を見下しながら、吐き捨てるように命じた。

 「本当にうるさい奴だな。早くこれに目隠しと、ついでに猿ぐつわでもして黙らせてしまえっ」。

 今まで笑顔で周りの兵士達に感謝の言葉を吐き続けていた男は、その冷たい声のトーンに凍り付いた。革製の帯で目隠しをされ、視野が奪われると同時に再び襲ってくる恐怖。処刑される!。男は不自由な手足を精一杯ひねって抵抗したが、彼女達には無意味でしかない。

 「な、なんで目隠しを。いやだ。私は死にたくない。助けて。殺さないで。まだまだ生きたい。いやだ、助けてお母ちゃ〜ん!・・・」。

 目隠しと猿ぐつわによって、ようやく周りが静かになった。男はまだ猿ぐつわの間から声を漏らしているが、ただ「ウーン、ウーン」としか聞こえない。

 「レイラ様。それじゃ準備がととのいました。すぐさま放りこみますか」。
 「ふふふっ・・・。楽しみじゃな。よい。やれっ」。
 「はいっ」。

 ギギギィーーーー。

 天然の洞窟にしつらえられた扉が重い音を立てて開かれた。洞窟の中の牢獄に外の光が差し込む。とたんに洞窟内からは、なんともいえない異臭が漂い出てきた。

 「うっ!く、臭いっ!」。
 「むむっ、なんという臭気じゃ」。

 それは何日も穴蔵に閉じこめられている者達から発する垢の臭いに、薬草の催淫効果によって解き放たれた、発情した雌ならではの強烈な臭気が混じり合い、それはなんとも形容のしようのないものになっていた。そしてまた、その突然差し込んできだ明かりに驚いて、今まで真っ暗な闇の中でうごめきあっていた者達が、その動きを止めて一斉に入口を注視する。

 かつては誇りをもったアマゾネスの戦士達のなれのはて、今は本能のままに欲望を貪り続ける野生の雌そのものと化した者達。ある者は己の胸乳をかきむしり、ある者は互いの陰部を舐め合い、そして奥の方では複数の者達でひとりの者を押さえつけ陵辱をしていた者まで、みんなが動きを止め、目をらんらんと輝かせて、その明かりの源泉から差し入れられようとしているものを注視しているのだ。

 「くふふふっ、あさましさも極まれりという姿じゃな。もはや人というより淫欲に支配された淫獣そのものになっておるわ。人の心の奥底にある淫らな欲望を、ここまで解き放ってしまうとはのぅ。あの薬草、まさに聞きしにまさる効果よの」。
 「レイラ様、もはや私どもにはこれ以上見るに耐えません!。これではあまりにむごうございまする・・・早くご命令を頂かないと、私たちまでもおかしな気分になってしまいそうで・・」。
 「くふふ、そうか。では始めるか・・・・」。

 レイラは牢獄の中をのぞき込むようにして、牢内の囚人達に向かって大きな声で宣言をした。

「おいっ、おまえ達よく聞け。おまえ達のような裏切り者共には、もはや生きる価値すらないのだがな、我らのアイリーン様はそれを哀れと思し召して、おまえらに施しものを下された。今からそれを差し入れてやるから、ありがたく受けとるがよい」。

 そう言うとレイラは、その「差し入れ」を羽交い締めにしていた兵士達に目で合図を送った。間髪をいれずに兵士達が「差し入れ」を一気に牢の中へと突き飛ばす。洞窟の入り口から中は緩い傾斜になっていて、手足を縛られて目も塞がれた哀れなイケニエが、勢いよくその中に転がりこむ。

 二回転、三回転とごろごろと転がったまま、ちょうど女達が蠢いていたその手前で動きが止まった。うーん・・・、猿ぐつわをされたままの男が苦痛の声を漏らす。

 女達の一人がその声を聞きつけて敏感に反応した。
 「オ・ト・コ・・?」。
 その言葉に牢内にいた女達が一斉に反応し、イケニエの近くに群がり集まってきた。

 「おまえ達には素晴らしい贈り物じゃろう。それはおまえ達にくれてやる。おまえらには、たいした食事も与えておらぬから、そやつの股の間から出てくる白いものでも良い栄養源となろうて。生かすも殺すも好きにして良い。我らには遠慮はいらぬぞ・・」。

 レイラは面白そうにそう言うと、洞窟の牢獄の扉を閉めることを命じた。
 ガッシャーン・・・。音を立てて牢獄の扉が閉ざされ、中は再び暗黒が支配する世界になった。突如、牢獄の中からは歓声とも気勢とも、なんとも形容できない声が巻き起こった。

 ここ数日来聞いたことのない、囚人達の大歓声に兵士達が怯える。重い扉の奥で今、何が繰り広げられようとしているのか。それは囚人達の声の変化によって容易に想像がついたものの、まだ若い兵達にとっては、その醜悪さゆえに考えたくもないものだった。

 レイラは兵士達の反応を面白そうに眺めながら解散を命じた。兵士達はほっとした表情で日常の勤務に戻っていった。兵士が誰一人としていなくなり、自分一人になったことを確認すると、レイラは洞窟の扉に作られた小さな覗き穴に顔を近づけた。

 その穴からは扉に閉ざされた暗黒の世界の様子を、唯一覗くことができるのだ。暗闇の中で、たくさんの人様の者達が蠢いている。大きな固まりができあがり、それぞれにその中心にあるもの奪い合いが始まっているようだ。

 「ああっ、ほしい、それ、あたしの・・・・」。
 「いやあっ、ほしいっっのよぉ、あんたジャマしないで・・・」。
 「きゃああっ、ああんっ、きゃああっ・・・」。
 「どいてったら、あんたなんかに・・・」。
 「あんっ、あんっ、ああああああんっ、これ・・・・」。
 「ああオトコ・・・いいっ・・」。

 固まりの中心にあるもの、言わずとしれたイケニエの男が、今どうなっているのかは確かめる術がないが、女達の狂乱ぶりがどんどんとエスカレートしているのを見ると、とても無事であるはずがなすことは確かだ。

 レイラはその光景を覗き見ながら、右手を自分の股間に伸ばし、そして一人でいつもの自慰行為を始めた。今までに見たことのない凄まじい光景に目を奪われながら、レイラの右手の動きはいつも以上に激しく動いた。あたりをはばかることなく大きな喘ぎ声を漏らしながら・・・・

 

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